すべての人がおいしいお菓子を食べられるように。グルテンフリーでヴィーガンなお菓子を届ける「Savoia by haljam」

私がSavoia by haljamのお菓子と出会ったのは、藤沢市で開かれていた、とあるイベントでした。このお店、常設店舗は持たずにイベントやポップアップストアなどで出店をしているとのこと。

お店の台の上には、素朴で温かみのあるクッキーやマフィン、パウンドケーキなどが並んでいて思わず手に取っていました。聞くと、すべて「グルテンフリー」「ヴィーガン」のお菓子だそう。それって本当においしいの…?

家に帰って買ってきたガトーショコラを半信半疑でいただいてみました。一口食べてびっくり、お菓子として非常においしいのです。「グルテンフリー」や「ヴィーガン」の食品への意識がガラっと変わった瞬間でした。このおいしいお菓子をつくる方にお話をうかがいたい、そう思いSavoia by haljamの石井波瑠奈さんのもとを訪ねました。

そもそもヴィーガン、グルテンフリーって何?

最近よく耳にする「グルテンフリー」や「ヴィーガン」とはどんなものなのでしょうか。

まず「グルテン」とは小麦粉や大麦などの穀物に含まれる「グルアジン」と「グルテニン」という二種類のタンパク質が、水と絡み合うことでできるものだそうです。パンやうどん、パスタなど私たちが口にするものの多くにこのグルテンが含まれています。

このグルテンにアレルギーを持つ方がいます。また、アレルギーではなくても、グルテンに過敏に反応する「グルテン過敏症」やグルテンをうまく消化できない「グルテン不耐症」の方は実は多くいるそうです。こうした方がグルテンを摂取することで、たとえば慢性的な下痢やお腹の不調、集中力の低下、寝起きの悪さなどが出てくる場合もあるとのこと。そこで、こうした方に向けてグルテンを含まない「グルテンフリー」の食品が出てきているというわけです。

ヴィーガンとは肉や魚、卵、乳製品などの動物性食品を食べない人のことを指します。健康のため、動物愛護の観点から、環境負荷や食料危機への問題意識からなど、ヴィーガンとなる理由はさまざまなようです。

  • 「Savoia by haljam」の石井波瑠奈さん

グルテンフリーでもおいしいものを食べたい!その想いが出発点

もともと石井さんは甘いものが大好きで、以前は小麦とバターをたっぷり使ったお菓子も好んで食べていたそうです。そして、好きが高じて自分でもお菓子づくりをするようになったといいます。

しかし、度々胃腸に不調をきたしていたことから、生活習慣や食生活を見直すように。その一環でグルテンを含む食材を摂らないようにしてみたところ、体調が改善したそうです。そこで、自身がグルテン不耐症の傾向があることが分かったのです。

ただ石井さんは、お菓子が大好き。そこで、グルテンフリーでもおいしいお菓子ができないものかと考えました。試行錯誤を重ねる中で、自分も満足できる本当においしいお菓子ができあがっていきます。

そのとき、「自分と同じようにお菓子を食べたくても食べられない方がいるのではないか。それはその人や一緒に食べられない周囲の人にとってもストレスになってしまうのでは」と考え、誰もが一緒に楽しめるお菓子として販売していくことにしたそうです。

  • 「おもしろい」「おいしい」と心から思えるお菓子を届けている

素材を組み合わせ、お菓子の持つ風味を引き出す

グルテンフリーのお菓子と聞くと、パサパサしたものをイメージしてしまいますが、石井さんのつくるお菓子は、クッキーであればそのざっくり感、マフィンならしっとり感と程よい弾力など、そのお菓子ならではの食感が味わえます。

これは石井さんがとてもこだわっていること。米粉、アーモンドパウダー、コーンスターチ、オートミールなどの粉を、それぞれのお菓子の風味として一番良いものとなるように配合しているそうです。また、ヴィーガン対応のため、卵や乳製品は使っていないのですが、ココナッツオイルや豆腐などを使用ししっとりとした生地やなめらかな舌触りのクリームをつくっているのです。

  • バナナ味のスコーンに豆腐でつくったきなこクリームを合わせたスコーンサンド(手前)や、柑橘類・湘南ゴールドのピールをココナッツオイルなどからつくったクリームに混ぜたバターサンド(右奥)、オートミールを中心とした生地に乳製品不使用のチョコチップとクランベリーを混ぜ込んだクッキー(左奥)など。次々に新商品をつくりだしている

楽しいお菓子を届けたい

定番のお菓子ながら、少し意外性のある食材の組み合わせも石井さんのお菓子の魅力。たとえば、マフィンにチリコンカンが入っていたり、タルトにいちじくとバルサミコが入っていたり…。これが絶妙に合うのです。

「自分が食べたことのある味であれば、『これとこれは合う!』って分かるんです。旬の食材やおいしそうだと感じた食材を見ながら組み合わせていくんです。自分がおもしろいと思わないものはつくりません。お客様もきっと楽しくないですからね」と石井さん。

また、普段のおやつに食べてほしいという想いからマフィンやケーキも300円台など、価格は抑えめ。高い食材でなく、地元産の新鮮な素材や旬の食材を使って最高の味わいをつくりだしています。グルテンフリーやヴィーガンという枠にとらわれずに、本当においしいものをつくっていきたいという想いを感じます。

  • 普段のお菓子として食べてほしいと手に取りやすい価格に

  • ジンジャーシロップも看板商品。炭酸やお湯で割って楽しめる

縛られるのは苦手。好きな時に好きな場所がちょうどいい

「Savoia by haljam」は、なぜ実店舗を持たず、イベントやポップアップストアのみでの出店としているのでしょう。

そのことを石井さんに聞いてみると「私、縛られるのが苦手で…。同じ場所でずっとやっていくのが耐えられなくなっちゃうと思うんです。なので、いろいろな場所で、期間を決めて出店できる環境がちょうどいいんです。そのほうが私も楽しくできるし、お客様にもきっと楽しんでいただけるから。なんだか私ってわがままですね(笑)」と。

その裏表のない、まっすぐなところがSavoia by haljamの魅力として出ているように感じました。

出店を心待ちにしているお客様は多く、毎回のように訪ねてきてくれる“ファン”もいます。「商品を並べてすぐになくなってしまうこともあります。そのときは、こんなに待っていてくれた方がいたんだと嬉しくなります」と石井さん。

続けて石井さんはこう話してくれました。「グルテンがダメな方もいれば、摂取しても大丈夫な方もいます。ヴィーガンも選択肢の1つ。すべての方にいいわけではないと思います。それぞれの体調に合わせて選ぶことが大切なんです。でも、おいしいものは皆さん食べたいですよね。だから、私はおいしいお菓子を届けていきたいな…そんなふうに思うんです」

すべての人がおいしいお菓子を食べられて、それがほんの少しの幸せにつながる。石井さんの想いは、これからも多くの人に楽しい時間を提供していくことでしょう。

  • 飾らぬ人柄でインタビューに笑顔で応じる石井さん

  • お菓子を心待ちにしているお客さんも

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