活気を取り戻した鎌倉・梶原口。コーヒー豆専門店「imagination COFFEE」が感じたこの街の10年

鎌倉駅から西側へバスで10分程のところにある梶原口は、観光を目的に訪れる人は多くない住宅街。しかし近年は各種メディアにも取り上げられる個性的なお店がちらほらとオープンし、密かに注目を集めるエリアになってきています。

それらの先駆けとしてオープンしたのが、確かな焙煎の技術と店主の人柄が親しまれているコーヒー豆専門店「imagination COFFEE(イマジネーションコーヒー)」です。そこで今回は、店主の宝珠山大輔さんにお店、そしてこの街の10年についてお話をうかがってきました。

高級住宅地として活気に満ちていた梶原口

梶原口は、もともとは野村不動産が高級住宅地として開発した「梶原山住宅地」の入口にあたる場所で、少し奥にある梶原4丁目にはかつて野村総合研究所もありました。鎌倉・稲村ガ崎で生まれ育った宝珠山さんにとって、この近辺は親戚が住んでいたり、馴染みのレコードショップがあったりして親しみのある場所だったのだとか。

当初は野村グループの関係者がたくさん住んでいて活気があったようですが、後に野村総合研究所が移転してしまい、宝珠山さんが今のお店となる物件を紹介された頃には空きテナントが目立っていたそうです。

  • 瓶に入ったコーヒー豆が特注のカウンターに並べられている

  • 店主のアイデアを元に小学校からの友人がデザインしたロゴ

  • 10年前のオープン直後のお店の様子

  • 2023年現在のお店の様子

再び人々が集まる地と直感し開店を決意

“あんな場所でお店が成功するはずない”と心配する知人もいたそうですが、「鎌倉にしては相場が手頃で環境も良いため、今後は鎌倉移住の穴場となって人が増えていくはず」と直感した宝珠山さんは梶原口でお店をオープンすることを決意。

限られた予算の中、鎌倉で育った同年代の友人たち、内装デザインを担当した「atelier 2F(アトリエニエフ)」の山田夫妻、お店のギフトパッケージやロゴデザインを手がけた水谷夫妻といった若きクリエイター達とともに元薬局だった建物をリノベーションしてお店をつくり上げていきました。

「当時は、『atelier 2F』は家具工房として独立したばかり、水谷夫妻は後に小町通りで運営することになる雑貨店『WELKAM(ウェルカム)』の開店前だったこともあり、デザインだけでなく内装の作業も一緒に手伝ってもらえたのはラッキーでした」

  • リノベーション作業中の様子

  • 内装作業中の宝珠山さん

  • 右側の壁際には「atelier 2F」のオリジナルプロダクトが置かれている

  • 左側の壁際で「WELKAM」の雑貨も取り扱う

そして、街の雰囲気が変わっていく

「開店当初はお客様が来なくて暇でしょうがなかった」と笑う宝珠山さん。しかし、宝珠山さんの直感通りにこの近辺に他所からの移住者が増えてきたこと、お店の洒落た雰囲気、そして何より熱心に研究された焙煎の技術、扱うコーヒー豆の確かな質、宝珠山さんの親しみのある人柄・軽妙なトークなどが口コミで評判となっていき、今では多数の常連客を抱える地元にはなくてはならないお店に。

そして、まるで「imagination COFFEE」の開店が呼び水になったかのように、梶原口には「ポンポンケークス」、「かかん」、「べーぐる もへある」など、それぞれが独自のこだわりをもつ個性的なお店の開店が続いていき、クリエイティブな文化を感じられる雰囲気へと変わっていきました。

  • 鎌倉出身の画家「MIZUTANIKOTA」のアート作品も飾られている

  • コーヒー豆の洗練されたパッケージデザイン

  • 鎌倉の観光名所が描かれた大人気ギフト商品のドリップバッグ

  • ドリップバッグの最新作として登場した横浜バージョン

この10年で変わったこと、変わらなかったこと

開店当初はまだ白かったカウンターの木や壁、ぴかぴかだったコーヒー豆を入れている缶などは日々焙煎の煙で燻され続けて渋い色合いへと変わり、10年の時を経た店内はいい感じにエイジングされています。そんな店内から宝珠山さんは、この10年の間に何を見て感じてきたのでしょうか。

「寂れていた梶原口に徐々に人や店が増えて活気が生まれ、注目されるようになったのは嬉しかったですね。その様子を見てきたので感慨深いものがあります。一方で、変わっていない部分もあります。住んでいる方々の温かくのんびりしたところです。移住してきた方もこの場所の空気になじむのか、そうした雰囲気の方が多いように感じます」

  • 豆のストックを入れている缶は日々の焙煎の煙でビンテージ品のような色合いに

  • コーヒー豆を購入した方へのサービスとしてホットコーヒーが提供される(カフェ利用も可)

宝珠山さんにお店の今後についてもうかがってみました。

「お店がその場所を盛り上げるきっかけにもなることを感じたので、将来的には他のエリアでの出店やカフェの運営をしてみたいという想いもあります。ただ、仮に二号店やカフェをオープンしたとしても自分自身は梶原口のお店に立ち続けてお客様と接していたい。自分にとってはお客様と話すこと・接することが一番大事なんです」

そう語る宝珠山さんの笑顔に、イマジネーションコーヒーが10年続いた理由が込められているように感じました。

にぎやかな観光名所とはまた違った、鎌倉の日常風景を感じられるイマジネーションコーヒー。鎌倉ローカルならではの魅力を味わってみたい方は、ぜひ一度足を運んでみてください。

  • お客様との会話を楽しむ宝珠山さん

  • 「imagination COFFEE」、「atelier 2F」、「WELKAM」のロゴが入ったプレート

人気記事ランキング

湘南ガーデンの人気記事ランキング

人気の画像