家族が幸せに過ごせるように~「高橋母乳相談室」開設から40年。母乳育児の悩みに寄り添い続けてきた高橋明子さんの願い
大磯駅から歩くこと約15分のところにある「高橋母乳相談室」。母乳や子育てに関する相談や乳房ケアなど、開設から40年以上にわたり、安心して母乳育児を続けられるためのサポートをしています。
母乳に関する疑問や悩みを抱えているお母さんは少なくありません。そんなお母さん達の頼れる存在となっている代表の高橋明子さんに、どのような想いで相談室を開設し、お母さん達と向き合っていらっしゃるのか、お話をうかがいました。
助産師の仕事の大切さを知りその道を決意
以前は総合病院産婦人科に勤めていたという高橋さん。助産師の道に進んだきっかけは、お母様の勧めだったといいます。自宅分娩を経験された高橋さんのお母様は、助産師という仕事の重要性を感じ、高橋さんにそのことを伝えられたのだとか。
助産師になるためには看護師の資格も必要となります。看護短大へ進学した高橋さんは、出産や育児の支援について学ぶ母性看護学の授業で魅力的な先生との出会いを果たします。先生が立ち会ったこれまでのお産の話に魅了され、自らもお産に携わっていきたいと助産師になる決意が固まったといいます。
お母さん達に優しく寄り添う高橋明子さん
「桶谷式乳房管理法」との出会いから相談室開設へ
看護学校を卒業後、助産師となり入院中のお母さん達に乳房ケアを行っていた高橋さん。 ただ、産後の入院期間で行えるケアは限られ、退院するお母さん達を見ながらもどかしさを感じていたそうです。
そんな時、乳房ケアの新しい方法として“桶谷そとみ”さんが開発した「桶谷式乳房管理法」 を学ぶことに。それまでの痛みを伴う乳房ケアとは異なり、桶谷式は痛みもなく、 柔らかな乳房と美味しい母乳につながるケアで、その画期的な技法に高橋さんは感銘を受けたといいます。
助産師として働きながら桶谷先生のもとで「桶谷式乳房管理法」を身につけた高橋さん。結婚を機に大磯へ引っ越すこととなり、兼ねてからの“お母さん達の長期的なケアをしたい”という想いの実現のために「高橋母乳相談室」を開くことを決意します。
お母さんの抱える悩みに寄り添う
お母さんが赤ちゃんに授乳する光景を当たり前に思う方もいらっしゃるかもしれません。でも実は「授乳」はお母さんなら誰でもできることではないのです。授乳したいのにうまく母乳が出ない、赤ちゃんが上手に母乳を飲めないために成長に影響が出る、お母さんが胸の痛みを伴う乳腺炎になり授乳が困難になるなど、簡単なものではありません。
高橋母乳相談室では、お母さん達の胸の悩みを解消するとともに、赤ちゃんが飲みやすい母乳の状態を目指し、桶谷式の技法で施術を行っていきます。母乳をあげていると胸が硬くなるといったトラブルも多いのですが、施術後はマシュマロのようなホワホワの胸になるそうです。
また、高橋さんはお母さん達に寄り添い、体はもちろん、心の健康も支えています。
「おっぱいに触れるとその方の健康状態、心の状態もわかるんです。何か心配事があるのかな、ため込んでしまっているのかな、と感じた時こそ他愛のない会話を大事にしています。誰かに話すこと、外に出すことが大切だと思うんです」と高橋さん。
そして、赤ちゃんの泣き方やおっぱいの飲み方から、赤ちゃんの健康状態を捉えることもできるため、できる限り親子で来てもらいたいと高橋さんはいいます。
お母さん同士でもコミュニケーションが取りやすい待合室
月に1回、子どもの撮影会も行っているのだとか
母子の成長を感じられる喜び
母乳・育児相談を40年続けて来られた理由について高橋さんにお伺いしてみると次のような答えが返ってきました。
「お母さんと赤ちゃんの変化や成長を一緒に感じられることが嬉しいんです。もちろん大変なこともありますが、お母さんや赤ちゃんのためにも辞められないなと。この仕事をさせてもらっていることは本当にありがたいことです」
おもちゃなども置いてあり子どもも楽しめる室内
地域に根差し母子を見守る
高橋母乳相談室には、ご近所さんや地域コミュニティの方々からの紹介で相談に訪れる方が多いとのこと。また、親子2代にわたって来られる方も少なくないのだとか。
インタビュー中に一本の電話が鳴ったのですが、その電話は以前乳房ケアを行っていたお母さんから。ケアを終えてもやり取りが続くことは少なくないそうで、母乳の期間を終えた後もお母さん達の心の支えになっているのだと感じました。
母乳相談室の前には乳腺炎の際の手当て用のアロエ
きれいなものをきれいと思えるお母さんでいてほしい
インタビューの最後、高橋さんはこんなお話をしてくれました。
「昨日、空を見上げると満月がとってもきれいだったんです。そんな満月を見て“きれいだな”と思えるお母さんでいていただきたい。穏やかな気持ちで過ごしていただけるよう、今後もお母さん達はもちろん、その家族との繋がりも持ちながらサポートをしていきたいと思っています」
大磯に開業してから約40年、これまで携わってきたお母さんはなんと1万人以上になるのだとか。それだけ乳房ケアを必要としているお母さんがいるということでもありますが、高橋さんの温かな人柄に触れ、“忙しい育児の中で、高橋さんに会って話をして元気をもらえる”ということも一つの来訪の目的になっているように感じました。筆者も一人の母ですが、高橋さんのような存在がいると思うだけで、子育てするうえでの大きな力と安心感が生まれてきます。
愛に溢れた高橋さんのサポートは、きっとこれからも多くのお母さんに元気や勇気を与えていくことでしょう。
湘南で暮らす人々
本コラム『湘南で暮らす人々』では、この地で生活を営む人々にフォーカス。「やっぱりこの街が好きだ」というみなさん、そして「いつかはここで……」と憧れを持つみなさんと一緒に、多彩なライフスタイルを覗いていきたいと思います。
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高橋明子
総合病院産婦人科で働いた後、1981年に神奈川県・大磯町に高橋母乳相談室を開業。「桶谷式」の技法でこれまで1万人以上のお母さん達の乳房ケアを行う。 地域のお母さんと赤ちゃん、その家族が母乳育児を楽しく安心して続けられるようにサポート業務をしている。
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高橋母乳相談室
神奈川県中郡大磯町西小磯755-6
[診療時間]
平日8:00~13:00、土曜日は隔週で診療(予約制)
[休診日]
木曜、日曜、祝日、隔週土曜は隔週
※変動あり。詳細は電話、メールでご確認ください
[お問い合わせ]
Tel:0463-61-6739
Fax:0463-61-6739
E-mail:akiko@takahashi-bonyu.com
[WEB]
HP:http://takahashi-bonyu.com/
ライター情報
菊池沙央理
茅ヶ崎の海のそばで愛する家族と生活中。コーチングを用いながら「対話」を通して、人の想いに触れ、人の魅力を表現する事が好きです。言葉でたくさんの事を伝えていきます。
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