鎌倉・笛田の知る人ぞ知るツツジの隠れ名所「仏行寺(ぶつぎょうじ)

鎌倉市の西側、笛田の閑静な住宅街に「仏行寺」という小さなお寺があります。有名な観光名所から外れているため、訪れる人もあまり多く無いお寺なのですが、明月院の紫陽花鎌倉山の桜などと匹敵するほど、鎌倉の四季が体感できる場所として、春の行楽シーズンにはお寺の裏山一面のツツジが楽しめる、まさに穴場的スポットなのです。

鎌倉幕府の重鎮・梶原氏所縁のお寺

仏行寺は、鎌倉幕府の重鎮とした活躍した梶原氏に所縁のあるお寺で、正式には「笛田山・佛行寺」といいます。

2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも主要人物として登場する梶原景時(かじわらかげとき)は、源頼朝の寵臣として、鎌倉幕府の成立に貢献します。源頼朝の没後、二代将軍頼家のときに梶原景時は権力闘争に敗れて追放され、一族は滅ぼされてしまうことに。景時の息子である梶原景季(かじわらかげすえ)も、父と共に討ち死に。これを知った景季の妻、信夫(しのぶ)は悲しみのあまり自害してしまいます。

信夫の霊は、毎晩のように夫を悲しみ泣き続けたそうで、その声に哀れみを感じた村人たちが信夫の霊を慰めるために、1495年(明応4年)仏行寺が建立されたと伝えられています。

裏山の斜面沿いに見事なツツジが咲き誇る

入り口のお賽銭箱に拝観料をいれたら、山門をくぐり正面が本堂になります。本堂の左手から境内の裏手へと歩いて行くと美しく整備された庭園と裏山があります。

庭園の前にはベンチが置かれていて、座りながら庭園や裏山の斜面を眺めることもできます。見事な池のある回遊式庭園だけでも見応えがありますが、4月中旬から5月上旬頃になると裏山の斜面一面にカラフルに咲き誇るツツジを見ることができ、まさに圧巻と言いたくなる見事な絶景となります。

源太塚の伝説

仏行寺の裏山の頂には、梶原景季の討ち死の証として送られてきた片腕が埋められていると伝わる源太塚があります。

梶原景季は、通称源太と呼ばれ、武勇に優れた人物だったといわれています。源平合戦の戦いの1つである宇治川の戦い(木曽義仲と源頼朝が派遣した源義経との間で起こった戦い)では、佐々木高綱(ささきたかつな)と激しく先陣を争い、その様子は宇治川の先陣争いとして、語り継がれています。

源太塚には、敷地の奥にある石段を登って行くことができます。少し急なのでちょっとした山登り気分になりますが、源太塚のある場所からは、庭園を全景が見れるだけでなく、鎌倉山方面の景色を一望することができます。

鎌倉駅から離れるからか、仏行寺の敷地内はツツジのシーズン中でも、あまり混み合うこともなく静かな雰囲気に浸れます。ツツジ鑑賞のあとは、周辺散策もおすすめ。笛田の住宅街には畑や緑地が多く、里山のようなのどかな雰囲気を感じることができます。にぎやかな観光名所とはまた違った雰囲気を堪能できる鎌倉へ、是非訪れてみてください。

主要参考文献
『かまくら子ども風土記(改訂14版)』、鎌倉市教育委員会、2019
『鎌倉の寺 小事典』、かまくら春秋社、2001
小澤彰『鎌倉 歴史と文学の古都 下巻』、郷土文学研究会、1980

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