青空マルシェから、人と自然をつなぐ「88旬とオーガニック みつばちハッピ」

88旬とオーガニックみつばちハッピは、「旬のもの・無農薬の野菜を通して、人と自然をつなぐ」をコンセプトにした八百屋さん。三浦産を中心に、つながりのある農家さんから仕入れた旬の野菜や加工品、また衣類など暮らしを健やかに彩る日常アイテムを、青空マルシェで販売しています。

  • Photo© みつばちハッピ 

  • Photo© みつばちハッピ

店主のももせあつしさんは、長野県松本市の生まれ。大学時代に上京し、卒業後は都内の編集社やダイビングショップの営業マンなど、食の道とは異なる業種の企業に勤めました。その中で、なんと2度も倒産を経験し、会社に頼らずに自分で稼ぐ術を身に付けること、手に職を持つことの大切さを身に染みて感じたそう。

二度目の倒産後、フィットネススタジオをフランチャイズ起業し、会員のダイエットをサポートするため食にも目を向けるようになります。そこでとある本との出逢いからローフードに目覚め、ローフードマイスターの資格を取得します。

みつばちハッピのはじまり

ローフードの食事作りを伝えるため、新鮮で美味しく安全な野菜を求めて、有機農家さんから直接仕入れるようになります。余った食材を、スタジオの生徒さんやご近所にも配ったところ、定期的に購入したいという声が多く届き、受注販売をするように。「せっかく産直で届くのだから新鮮なものを届けたい。産地や生産者のことを伝えたい。」と思い、ももせさんは自分で最小範囲の配送を始めました。この距離を「ミツバチの飛び回る程度」と例えていたところから、「みつばちハッピ」の原型ができたのです。

ミツバチは、花の蜜を集める過程で植物の受粉を助けます。植物の生命をつなぎ、生態系を守るミツバチの役割にならい、人と人を、人と自然をつなげる、というコンセプトが徐々に形作られていきます。

  • 野菜の美味しさ、美しさを引き出すシンプルな料理を伝えます。Photo© みつばちハッピ

  • ももせさんのローフード教室は一躍人気に。Photo© みつばちハッピ

自身も野菜中心の食生活をするようになると、あくせくと都内で働くよりも、もっと自然の近くでゆったりと暮らしたい気持ちが芽生えるように。そこで、都内へも通いやすく、知人も多い湘南で新たな拠点を探し、現在の三崎に落ち着きました。

同じ頃、野菜の流通をもっと知りたいと思い、太田市場へ手伝いに行くようになります。ここで一般的な食の流通、日本の台所の危機をまざまざと感じます。利便性や価格が重視され、わたしたちの命を支えるはずの「食」が、工業品と同じような規格ありきの「商品」として扱われている様を目の当たりにしたのです。

その体験から、顔の見える安心の食べ物を届けることに本腰を入れ始めます。“どうせなら、自分の住む地域の農家さんや生産者を応援したい。また出身地の長野の農も紹介したい”と考え、「海のもの、山のものマルシェ」として、旬の野菜や農産加工品だけでなく、ひじきや天草などの海産物、オーガニックコットンで作られた衣類なども販売する現在のスタイルへと発展しました。

  • 海のもの、として名物になっている採れたての天草と生ひじき。調理方法が添えられており、新しい食材にも挑戦しやすい。Photo© みつばちハッピ

  • あまり目にしたり食べたことのない生ローリエやハーブのお花が棚を彩り、野菜に花を添えます。Photo© みつばちハッピ

青空マルシェで伝えたいこと

ももせんさんが店頭に商品を並べると、次々とお客さんが吸い寄せられるように集まってきます。常連さんも多く、ももせさんがセレクトする安全で良質なこだわりの商品を選びに、また、ももせさんが伝える生産者のお話や、野菜の調理方法などにも聞き入っている様子。

青空マルシェのスタイルで販売するようになったのは、空きスペースを使ってもらいたい、と声を掛けてもらった方たちとのご縁から。そしてそれを続けるのは、店舗を持たずに営業することで、一般的に高いとされている有機野菜の値段をできるだけ抑えたいからだと話します。

けれど、それだけでなく、道を行く人たちとの会話を、天気や季節によって移り変わる町の風景を楽しんでいる姿が印象的でした。

このように生産者と生活者をつなげるミツバチのような役割をする中で、今後広げたい活動もあります。

「土や植物と向き合うことが本業の農家さんには、生活者に対してわかりやすく商品を伝えたり、自分自身の想いをPRする時間がないことも多い。こだわりを持って生産している農家さんの想いをもっと多くの人に伝えるため、ブランディングやマーケティング支援の活動にも力を入れていきたい。」と言います。営業や編集のスキルが食の道でも活かされます。

農家さんの想いとともに、多くの人へ安全の食を届けること。また生活者の声を吸い上げ、商品に反映させること。このように、自身のマルシェをフラッグシップとして、利用価値を上げることを目指していきます。

近年、日本の食文化や健康が揺らぎ、行政や企業、市民グループなどが食育活動に盛んに取り組んでいます。地域密着型の八百屋さんが農家さんとタグを組むことで、より細やかな商品やサービスが生まれ、生活者にとっても食の生産・流通はもっと身近なものとなるのではないでしょうか。

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