「武士」がオーナー!? 多様性を育てる鎌倉のゲストハウス「ゲストハウス彩」
鎌倉駅の東口を出て御成通りを抜けた先の小道に入っていくと、鎌倉風情が漂う古民家を改装した「ゲストハウス彩」があります。ゲストハウスとは、ドミトリーと呼ばれる相部屋や共用スペースがあり、宿泊者同士やスタッフとの交流がうまれやすい空気感が特徴の素泊まり宿。ホテルや旅館に比べ安価に泊まれることから、ひとり旅のかたを中心に支持を得ている宿泊施設です。
今回は、365日甲冑を着て生活をしているオーナーの高野さんに、ゲストハウス彩の特徴やコンセプト、「甲冑」を着ている理由についてお伺いしました。
築90年の古民家を改装したというゲストハウス彩。全3部屋の客室、共用のトイレとシャワー、リビングがあります。ひとり旅や海外からのゲストが多く、リビングではゲスト同士の交流がさかんにおこなわれているそう。
「言語の壁があっても、身振り手振りや表情だけで笑い合って、仲良くなっている姿をよく見ます。昨日まで他人だったゲスト同士が交流を深めてくれるというのは、迎える側としてとても嬉しいですね」と高野さん。
その日に出逢ったゲスト同士で一緒に観光にでかけたり、その後も友達として交流が続いている人も珍しくないとか。
誰でも「ひとりの人」として活躍できる社会をつくりたい
ゲストハウスを開業する以前は、認知症のお年寄りが生活するグループホームで働いていた高野さん。しかしそこでは、「危ない」という理由でさまざまな禁止事項があったそう。そのうちのひとつが“調理場”の利用。
「なにかみんなで楽しいことをしたいと、施設の方々を説得し、みんなで料理する時間をつくりました。すると、車椅子生活をしていたおばあちゃんが立ち上がり、包丁を手にとって具材を切り始めたんです。その光景をみて驚いたと同時に、管理上のルールとはいえ、禁止にしていたことでお年寄りの可能性を潰していたのかもしれないと気づかされました」
このとき高野さんは、「病気や障害のある方でも活躍できる社会にしたい」と思ったそう。
誰もが“旅人”になれるゲストハウスに
高野さんがゲストハウス開業を決めたきっかけは、鎌倉花火大会での出来事でした。
「車椅子の女の子を案内する機会があって。だけど鎌倉にはバリアフリーの宿泊施設がなかったんです。当日は駅も混んでいて電車に乗るのは難しく、結局バリアフリー対応の大船のホテルまで押して歩きました」
「鎌倉は人気の観光地なのに、車椅子の方など、障害があっても快適に過ごせるための受け入れ体制が整っていない。なので、誰でも普通に泊まれて、旅人になれる場所を鎌倉につくりたいと思ったんです」
そんな想いからクラウドファンディングで支援を集め、2017年10月15日に“多様性を育てる”をコンセプトにした「ゲストハウス彩」をオープンします。
どんな人でも出逢いと交流を楽しめる空間
ゲストハウス彩は、建物の1階部分をバリアフリーに設計。車椅子の方でも安心して泊まれます。
またグループホームでの経験から、シニア層や障害を持つ方をスタッフとして雇用。「病気や障害のある方でも活躍できる社会にしたい」という想いを形にしています。
甲冑を着た高野さんをひと目見ようと海外からのゲストも多く、国籍、年齢、性別、身体的ハンデを越えた交流の場が「ゲストハウス彩」にはあります。
車椅子の方でも安心して利用できます
海外の方とも楽しく交流
「甲冑」を着る理由
最後に、どうしても気になる「甲冑」を着ている理由について触れてみました。
「人って、違っていいんですよ。障害があっても、肌の色が違っても、みんなひとりの“人”なんです。そして、それぞれに活躍できる場所が必ずある。それを伝えるために、コンセプトである“多様性を育てる”、つまり『人と違っていい』ということを自ら体現したいと思って」
そう話す高野さんのいる「ゲストハウス彩」なら、どんな方でも“そのままの自分”で、楽しい時間を過ごせそうだなと感じました。鎌倉の「武士」に会いに、「ゲストハウス彩」を訪れてみませんか?
ライター情報
yoshiki
91年うまれ。湘南を拠点に、"自分のやりたいこと"だけにフォーカスした生き方を実践中。文章と写真とミスチルが好き。自分らしく生きる湘南の人々の魅力を伝えていきます。
https://tabi-atelier.com
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