“グルテンフリーを楽しむお菓子”を届けたい。北鎌倉の古民家で営む焼菓子屋さん「canola flower」

北鎌倉の線路沿いに佇む古民家。一見普通のお宅のようですが、週2日は甘く香ばしい香りに包まれる焼菓子屋さん「canola flower」としてオープンします。グルテンフリー&ヴィーガンをコンセプトに、オーガニックや国産にこだわり、小麦・卵・乳製品・白砂糖を使用せず、“食べたいものを我慢しないで、ずっと食べ続けられるおやつ”を届けています。

開店日には地元の方だけでなく、SNSを頼りに遠方から訪れるお客さんもいるのだとか。なぜ北鎌倉の小さな古民家で、グルテンフリーの焼菓子店をはじめたのか、オーナーの近藤菜保子さんにお話をうかがってきました。

  • 看板がお店への道標

  • 線路脇の狭い路地が 「canola flower」 へのアプローチ

季節ごとに繰り返される不快症状をきっかけに食生活を一変

かつては通勤に往復2時間以上を費やし、時間に追われるような会社員生活を送る中、休日のパン屋さん巡りが楽しみだったという近藤さん。そんな大の小麦好きの近藤さんがグルテンフリーのお菓子づくりを始めたのには、あるきっかけがあったそうです。

ある時突然花粉症を発症し、病院へ通うようになった近藤さん。季節ごとに繰り返される不快症状に悩まされ、薬が手放せない生活に。そんな時、馴染みの整体院で食物アレルギーといった可能性を考え「小麦・卵・乳製品・白砂糖を一度止めてみたら」とアドバイスをもらい、試してみることにしたといいます。

実践してみたところ、かなり症状を抑えられるようになったそう。ただ、これまで小麦を好んで食べていた近藤さんにとって、小麦を使ったパンやお菓子を我慢することは大きな苦痛を伴うものでした。

そんな時に出会ったのがグルテンフリーのお菓子。それからは、美味しいグルテンフリーのお菓子を探し求めることが新たな楽しみになったといいます。

グルテンフリーのお菓子の改善点に気付き、食べる側から作る側へ

小麦に含まれている “グルテン” は、人によってはアレルギーの原因となるデメリットがある一方、パスタやうどんなどの“もっちり感”やパンの“フワフワ感”を出すメリットがあります。つまり、グルテンフリーの食品に共通する課題は、小麦を使わずにどれだけ“食感の美味しさ”を引き出せるかということ。

様々なグルテンフリーのお菓子を食べてみて、固いものやポロポロと崩れてしまうものが多いなど、まだまだ改良点があることに気付いた近藤さん。それらの気付きをもとに、ご自身の思う“美味しいグルテンフリーのお菓子”を作り始めます。作る楽しみの中で、以前よりも身体をいたわる大切さに気づいた近藤さんが、会社を辞めることになったのは自然な流れでした。

試行錯誤を重ねて作り上げたお菓子は友人達の間で評判を集めます。そうした中で、鎌倉で開かれるマルシェで月に1〜2回お菓子を販売するようになった近藤さん。お客さんの反応を肌で感じながらお菓子を売ることに楽しさを感じ、次第に自分のお店を持ちたいと思うようになったといいます。

  • オープン直後に並ぶ焼きたてのお菓子

導かれるようにして出会った北鎌倉の古民家

地元・鎌倉で出店することにこだわりを持っていた近藤さんは、不動産会社の紹介で北鎌倉の線路脇の路地に魅力的な築97年の古民家を見つけます。既に入居者が決まってしまっていたものの、短期間の居住予定だったため内見だけさせてもらったところ、入居がキャンセルになったという連絡が入ったそうです。

「いざ物件を借りられるという状況になったら、本当に自分にできるのだろうかという不安が出てきて、すぐに決断できなかったんです」と近藤さん。

そうして検討しているうちに新たな入居者が現れたそうです。しかし、なんとその入居者もキャンセル。近藤さんは「これはもうここでお店をやりなさいということなんだな」と清水の舞台から飛び降りるつもりで物件を決めたといいます。

お店の魅力といってもいい印象的な「小窓」。物件が決まった後に、古い木枠の小さなガラス窓から焼菓子を売ってみたら楽しそうだな、と思ったそうです。

  • お宅へお邪魔するような感覚でお店へ

  • 懐かしい雰囲気は残しつつリノベーションした室内

  • 暖かい日差しを浴びる縁側

  • 大船駅と北鎌倉駅の中間にあるお店のすぐ脇は線路。たまに通る電車の音が心地良い

こだわりが詰まった「canola flower」のお菓子

近藤さんの毎日は忙しく、週2日の営業日以外はお菓子の試作に時間を費やしています。

「canola flower」のお菓子に使われる無農薬の米粉は、同じ鎌倉市内にある精米所に発注した製粉したてのフレッシュなもの。製粉したての米粉を使用することで味が格段に良くなるのだとか。米粉以外にも、お菓子によってアーモンドパウダーや玄米粉、たかきび粉などをブレンドしながら使い分け、そのお菓子ならではの食感や美味しさを引き出しています。

白砂糖を使わず、てんさい糖、メープルシュガー、ココナッツシュガー、黒糖を使用することで、お菓子に優しい甘さが生まれます。甘さ控えめな分、粉の香ばしさも引き立ちます。

グルテンが含まれるお菓子に近づけるのではなく、グルテンフリーの素材が持つ美味しさを最大限に生かすのが近藤さん流。

  • この日のマフィンは手前から時計回りに、ダブルチョコバナナマフィン(400円)、塩チョコチップマフィン(380円)、沖縄・浜比嘉島の塩マフィン(350円)。フワフワな食感で、こだわり抜いた素材の味をしっかりと感じられる

  • 「canola flower」という店名の由来の一つにもなっている菜種油には近藤さんのこだわりが。希少な国産(湯洗い洗浄法、非遺伝子組換え)のものを使用し、酸化による味の劣化を防ぐため買い置きはしないという徹底ぶり

  • 量り売りタイプのクッキー(10円/g)はザクザク食感が人気。容器持参大歓迎なのも地球にやさしい「canola flower」ならでは

  • ちょっとしたプレゼントにも良さそうな袋入タイプの焼菓子

グルテンフリーだからこその美味しいお菓子

今後について、「いずれはこの古民家の縁側で焼菓子に合うコーヒーを提供できたらと思っています」とにこやかに話す近藤さん。

縁側でのんびりお菓子とコーヒーを楽しむ、素敵な時間とともにたくさんの物語が紡がれていきそうです。

「グルテンフリーでも美味しい」ではなく、「グルテンフリーだから美味しい」と思わせてくれる近藤さんの焼菓子を、今日も心待ちにしたお客さんが買い求めにやってきます。

アレルギーで小麦が食べられない人はもちろん、そうでない人も暖かいこの季節、春風を感じながら「canola flower」へ足を運んでみませんか?

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