【湘南談義録 -SHONAN casual minutes-】

「気付いたら3年以上が経ってましたね」対談:Fencerx南大治(第1回)

去る2016年10月、湘南・辻堂のあるお店が移転し、またあるお店が“独立”したのをご存知でしょうか。かつてその2軒はひとつ屋根の下でスペースを共有し、数々のグルーヴを生み出してきました。お店があった、そして現在もある浜見山付近の人々を巻き込んで、カルチャーを生み出していたのです。

今回は、オリジナルな味付けに定評がある辻堂駅前のカレー屋さん「Minami Curry(ミナミカレー)」のオーナーシェフ・南大治さんが、日本酒DJバー「オフェンバー」の店主であり、音楽アーティストとしても幅広く活躍しているFencer(フェンサー)さんを迎えます。

専門分野の異なる彼らを結びつけたもの、そして彼らに共通するものとは一体何なのでしょうか。2人が暮らす街「湘南」をテーマに繰り広げられる、刺激に溢れたトークをご覧ください。

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――お2人とも、「ここ湘南が地元ではない」という共通点をお持ちです。そこで、“移住組から見た湘南の良さ”というものを捉えていけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。

さて、先に湘南にやってきたのは南さんでしょうか?

南:
そうかなー。結婚して最初の方は東京に住んでたんだ。東京から川崎に移って、それからこっちだね。俺が29の時にこっちに来たから……今から12〜3年ぐらい前かな?

Fencer:
僕は今年の6月で8年目なんで、3年違いぐらい。30ぐらいの時に来たかな? ただ、僕は独身でしたけどね。今もだけど(笑)

南:
まーそしたらライフスタイル的には全然違うよね(笑)俺も独身で湘南来たかったわ!(笑)

独身の人は本当に楽しそうだな、って見てて思うもん。独身でオフェンバーとか、めちゃくちゃ楽しいと思うよ。

Fencer:
確かに、(お客さんは)独身の人が多いですね。みんな楽しそうだし、自分がお客さんの立場だったとしても楽しいだろうなーって思う。 僕は結婚してないし、子どももいないからその感覚は分からないけど、「この環境は子育てにいいんだろうな〜」とは思いますね。

  • ▲ 南大治さん(「Minami Curry」店主)

――「湘南は子育てにいい環境」というのはよく聞きますね。

南:
それは間違いない、って言える。辻堂はすごくいいところだと思う。茅ヶ崎とかでも家を探してて、そっちもいいなとは思ったけど、決定打は辻堂海浜公園だった。あの公園が本当に良くて、その近くに住みたいなって思ったんだ。

Fencer:
あの場所は(子育てに)使ったほうがいいですよね。僕みたいな独り者でも、たとえば朝散歩しに行ったりすると「あぁ、すごくいいな」ってなるんですよ。子どもとかいたらもっと最高なんだろうなぁ……うん、その前に彼女だな。これ書いといてもらってもいいですか(笑)

湘南に来る前は大阪に住んでたんですけど、本当に環境がぜんぜん違う。もう都会暮らしはいいかなって。

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福井出身のFencerさんは、湘南に引っ越してくる前は大阪の中心部に住んでいました。大阪のシティライフからユルいスローライフへの移行を考え、沖縄への移住も考えていたそうですが、DJの仕事が集中する東京にも足を伸ばせる湘南を選択。3日取ったお休みの間、住まい探しは1日で済ませてしまったといいます。

残った2日を、Fencerさんは東京のクラブ巡りに充てました。そして、夜も更けきった午前3時ごろ、渋谷の「FAMILY」というクラブで、茅ヶ崎で『JAZZAGROUND』というイベントを主催するシンタさん(DJ Shiningstarr)と出会いました。

まだTwitterがなかった当時、Fencerさんは頻繁にブログを更新していたのですが、シンタさんはそのブログをこまめにチェック。Fencerさんが湘南で住まいを探しているということを知りました。

めんどくさいことは承知の上で、新しいことはとりあえず試してみよう、って(南)

Fencer:
「SUBURBAN(Fencerさんが所属する音楽ユニット)のファンなんですよ! 湘南に引っ越すんですよね? 僕ら茅ヶ崎に住んでるんで、一緒に遊びましょうよ!」って誘ってくれたから、「呼んで呼んで!まだ友達いないから」って返事して(笑)それからシンタくんがマメに連絡をくれるようになったんですよ。「お引っ越しの準備はいかがですか?」とか。

そのうちバーベキューにも声を掛けてくれるようになったんですけど、“(湘南は)しょっちゅうバーベキューする環境だな”って思った(笑)

南:
ブレッド&バターっていうシティポップ界では大御所な人たちが始めた「アナログ・レコードバーBB」っていうお店が茅ヶ崎にあったんだけど、シンタくんたちはそこでイベントをやってたんだよね? Fencerがそのイベントに絡みだした頃に、うち(Minami Curry)も2〜3年目とかだったと思うんだけど、当時はもうタッちゃん(Tyme./ヤマダタツヤさん。音楽ユニット・MASのリーダー)が常連になっててさ。

Fencer:
そのタッちゃんも、JAZZAGROUNDのメンバーと仲が良くて。「江ノ島で野外パーティーをやってるFreedom Sunsetのshibaさんって人が『(アナログ・レコードバー)BB』で忘年会をやるみたいなんで一緒に行きませんか?」ってシンタくんから誘われたので遊びに行ったんですけど、そこにタッちゃんもたまたま来てて。それでみんな知り合って、その後に彼とshibaさんと僕の3人で1回飲みに行ったことがあったんですよね。

その当時はカレー鍋が世間で流行ってたんですけど、「試しに食べてみたいなー、どんな味なんだろう?」っていう話になったときに、「いいとこあるから今度行こうよ」ってタッちゃんが言ってくれたのが(Minami Curryを知った)きっかけだったんです。だから、Minami Curry初回はカレーじゃなくてカレー鍋だったんですよ(笑)

  • ▲ Fencerさん(音楽アーティスト、「オフェンバー」店主)

南:
そうそう! その時はカレー鍋が流行ってたから、「これに乗っからない手はないな」って思って、本格的なやつを俺が作ってやろうって思ったの。で、カレー鍋の素を作って、お店で「カレー鍋のパーティーができますよ!」って告知をしてたわけ。そしたらタッちゃんがそれに気付いて。

タッちゃんとはもうその頃にはCDを貸し借りしたり、一緒に飲みに行くぐらい仲良くなってて。その時に「こんど音楽仲間を連れてカレー鍋パーティーしたいんだ」って言ってきてくれたんだけど、それで来たのがshibaさんとFencerと、FreedomSunsetのメンバーだったんだよね。

Fencer:
そうそう。自分の家からも近かったし、1人で行きやすそうだなーって思ったんで、わりと頻繁にカレーを食べに行ったりしてましたね。

南:
浜見山でやってた当時はかなりユルい感じでやってたから、夜とかも静かだったし、「なにか面白いことをやりたいな」って気持ちが常にあった。だから、夜は別の人に間貸しして別のお店にしちゃう、っていうことをよくやってたんですよ。うちがここ(辻堂駅前の新店舗)に移ってくる前のオフェンバーみたいなスタイルでね。

間借りしてやる方も、スペースを提供する方も、互いにいろいろと大変だったんですけど、新しい試みはやっていったほうがいいなって思って。「めんどくさい」って言ったらそこで終わっちゃうからね。めんどくさいことは承知の上で、新しいことはとりあえず試してみよう、って。

お客さんと楽しみながら成長していきたい(Fencer)

Fencer:
自分も最初のうちは音楽の仕事と両立していけるかな? って思ってたんだけど、「そんなに力まなくていいし、軽い感じでやってみたら?」って大治くんが言ってくれて。

南:
まぁ、悪い意味じゃないんだけど、こっちは続けていくことに期待はしてなかったからね。2、3回ぐらいやってみてしんどいようだったら、そこでやめてもらっても大丈夫だったし。

それに、どのぐらいの期間・頻度でやりたいのかも分からなかったからね。「何か新しいことをやってみたい」っていうのをカウンター越しに飲みながら話してたから、「いいんじゃない?」って応えたの。単発のイベントをやるのかな? と思ったら「毎週(お店を)やりたい」っていう話だった(笑)

Fencer:
大治くんとその話をする前に、あるバーで1週間店長みたいなことをやらせてもらったことがあって、それも「オフェンバー」っていう名前だったのね。そこにも大治くんは遊びに来てくれて、「うちでもやってよ!」って言ってくれててさ。

やるならユルく、長くできたらいいなとは思ってたけど、(いっぽうで)毎週金曜ってやっていけるのかな……とも思ってました。でも大治くんも言ってくれてたし、あんまり何も考えずに「やってみようかな」って(笑)

(南さんが言っていたように)「やめたい時にやめればいっか」みたいな。ただ、気付いたら3年以上が経ってましたね(笑)

  • ▲ かつて「Minami Curry」があった場所で営業している「オフェンバー」

南:
いや、根性あると思うよ。週1とはいえ、続けるのは大変なことだからね。(続いても)2〜3ヶ月だろうな、って最初は思ってたし、こっちとしてもいろいろ大変なことはあるけど、お店に新しい風を入れるのはメリットだとも思ってたからね。

Fencer:
今年の2月22日で4年になるんですけど、(オフェンバー開始当初は)「夏ぐらいまで続いたらいいよね」ってお互いに言ってましたよね。最初は周りの友達が来てくれたけど、いったん落ち着くと本当に人が来なくて。「何やってんのかな、俺……」とかって思ったりもしたんだけど、あるタイミングでお客さんがババーって入るようになってから、もうやめるにもやめられなくなっちゃった(笑)

毎年新しいお客さんが来てくれて、どんどん盛り上がってきてる感じがしてね。

南:
「継続は力なり」って言うけど、本当にその通り。続けていって認知してもらうのはすごく大変なことなんだけど、続けていったからお客さんが確実についてきてるしね。

俺がFencerについてすごいなって思うのは、仕事柄なのか、どんどんイベントを打っていくところ。飲食店をやってる立場から言うと、(自分には)そこが欠けてるんだなって。日々の仕込みで手一杯で、先々の話題作りに向けて先手を打ってやっていく、っていうところまで手が回らなかったんだよね。

仕込みをちゃんとやって、美味しいものを作って、いつも通りお客さんに出す……っていうだけでも十分なんだけど、一緒に絡んでやってて勉強になったなぁ。

  • ▲ 「オフェンバー」の様子

Fencer:
逆に、僕はそれしかできない。ずっと(こういうことを)やってきてるから、楽しいことを常に考えて、実行する……みたいな。

(お客さんを)飽きさせないように、というよりは、自分が楽しんで、常にフレッシュでいたいんですよ。日々同じことを繰り返すのが仕事なんだろうけど、そういうのはあんま向いてないなぁ、とか思っていて。面白いことを次々と考えていきたいですね。

「日本酒DJバー」って謳って(オフェンバーを)やってるけど、日本酒に関してそこまで知識があるわけでもなく、ただ日本酒がすごく好き、っていうだけ。DJも20年くらいやってるけど、そんなに語れるほどでもないし。ただDJが好きっていうだけ。DJも日本酒も、お客さんと楽しんで、楽しさを共有しながらやっていきたいな……って。

オフェンバーを始めて2年が経っていた頃、Fencerさんは南さんからMinami Curryの移転を告げられます。それはすなわち、浜見山での間借りスタイルが終了するということでもありました。お店を続けるにはその場所をオフェンバーとして引き継ぐ他になく、Fencerさんは当時のことを「僕の中ですごく大きなことで、自分の人生においても転機だった」と振り返っています。

そのときFencerさんは何を思い、南さんは何を感じたのか。次回に続きます。

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Minami Curry
神奈川県藤沢市辻堂2−11-6

OPEN:
11:00〜15:00 / 17:00〜21:00(平日・土曜)
11:00〜16:00(日曜)
L.O. … 各営業時間の終了30分前

CLOSE:
月曜、毎月最終日曜

Tel: 0466-53-7287

Facebook: Minami Curry

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オフェンバー
神奈川県藤沢市辻堂5-20-16

OPEN:
19:00〜26:00(平日・土曜)
12:00〜18:00(日曜)

CLOSE:
月曜

Tel: 0466-47-7375

Facebook: @ofenbar
Instagram: @ofenber222

湘南談義録 -SHONAN casual minutes-

気心知れた相手とのおしゃべり。時に笑いながら、またある時には込み上げるものを感じながら……それは湘南の暮らしをよく表しているひとときかもしれません。

この街の生活を彩るものとは、いったいどのようなものなのでしょうか。本コーナーでは、“湘南の良さ”としてしばしば挙げられる「つながり」をテーマに繰り広げられるトークをお届け。海薫るスローライフのエッセンスをご紹介します。

ライター情報

akira suematsu

akira suematsu

湘南生まれ湘南育ちの純・湘南ボーイ。 学業、趣味などで国内外あらゆる処を訪ねてきたが、最も安らぎを覚えるのは鵠沼の海。ここまで言っといてサーフィン経験はない。ただ、交友関係にサーファーが増えつつあるせいか、最近はちょっとずつ影響されている。 まだ見ぬ湘南の魅力、そして多様なライフスタイルのあり方を求めて、ペンとカメラを両手に行動範囲を拡大中。

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