庭という暮らしの場から環境を考える。「逗子ガーデン」の提案する自然と共生する庭づくりとは
ここ数年でSDGsという言葉を耳にする機会が増えていますが、この言葉が出回る何年も前から造園業を通して持続可能な暮らしを提案してきた会社があります。湘南エリアを中心に庭づくりを行っている「逗子ガーデン」です。
今回は代表の鈴木さんと企画担当の久我さんに逗子ガーデンの提案する“自然と共生する庭づくり”と“持続可能な暮らし”の取り組みについてお話を伺ってきました。
造園を通して実現する持続可能な環境
逗子ガーデンは造園会社として1958年に創業。鈴木さんが2代目に就任した際に「自然と共生する庭づくり」をコンセプトに掲げ、以来、持続可能な環境づくりにつながる取り組みを進めています。
庭を環境の一部として捉え、地域の風土に合った樹木と自然素材を使用する、循環型の仕組みを導入するなど、庭づくりを通して様々な提案を行っている点を特徴としています。
また、造園業では剪定枝や枯れ草が莫大なゴミとして処理されますが、逗子ガーデンでは15年ほど前からこれらをすべて堆肥や薪などにして、循環させる活動も行っているそうです。
温暖な湘南エリアに適した柑橘類など、土地の特性を活かした庭づくりを行っている
原点は「自然と生きる」体験の楽しさ
鈴木さんが「自然と共生する庭づくり」をコンセプトに掲げた背景には、ご自身の幼少期の体験が深く関わっているといいます。
「私が子どもだった頃、夏休みに農家の親戚の家に行くのが、本当に楽しみでした。そんな親戚の家で過ごしたある夏の日の出来事なのですが、前日に庭に置いておいたスイカの皮を見に行くとたくさんのカブトムシが集まってきていたんです。昔は多く見られた光景ですが、今はなかなか見られない。こうしたワクワクする自然の体験を今の子ども達にも味わってほしい、それがコンセプトの原点にあったんです」と鈴木さん。
収穫して食べられる果樹や寝転がって遊べる芝生がある庭など、植えて終わりではなく、育てて楽しめる場を提供したい、そしてその自然とともにある楽しみが未来へ続いていくよう環境から考えた庭づくりを行いたい。自然と共生する庭づくりというコンセプトには、そんな想いが込められていたようです。
代表の鈴木さん
自然と共生する暮らしのアイデアを提供
“持続可能な環境づくりとしてできることは何か”について日々研究を行っているという鈴木さん。庭に取り入れることのできる仕組みを考え、自社が手掛ける作庭に活かすとともに、一部は商品化するなどして各家庭や学校へ広く提供しています。
「研究が大好きなので、ついついのめり込んでしまうんですよね」と話す鈴木さん。大学時代から様々な研究を行っていたそうで、その経験も活かしつつ日夜研究に勤しんでいるのだとか。
「鈴木さんの常に先頭に立って物事を進める行動力、熱心に研究する姿勢は本当に尊敬します」と企画担当の久我さん。こうした姿に刺激を受け、スタッフの方々も自らが考え、自然と共生し循環する環境づくりの実現のためのアイデアを次々に生み出しているそう。
そうして出てきたアイデアの数々は会社の敷地内に形作られ、訪れたお客さんも見ることができるようになっています。
壁面を活用して栽培する葡萄や、水の抜け方を活用して植物を育てるスパイラルガーデン、雨水タンク、逗子の間伐材(ひのき)を使って作られた小屋、土に返すことのできる特製プランター、コンポスター、コンポスタートイレなど、多くのアイデアが詰まっています。
逗子の間伐材で作った小屋の前に立つ久我さん
小屋では定期的にマルシェを開催し、農薬を使わずに育てた野菜や植物、堆肥等を販売
スタッフのアイデアから生まれた木製の大型プランター「畑のようなプランター」。野菜も育てることができる
販売している薪
循環の仕組みを学び、実践するコンポスター
現在、特に力を入れているのが、排出されたゴミを活用して有機物を分解し堆肥を作るコンポスターだといいます。鈴木さんは研究を重ね、大容量処理で発酵がじっくりと進む二層式のコンポスター「COMPOS」を開発。この二層式のコンポスターは、商品化し販売も行っています。
逗子や葉山には環境への意識が高い方も多く、コンポスターについて学びに訪れる方もいるそうです。熱心な先生との出会いをきっかけに、去年からは鎌倉市内の小学校にもコンポスターを設置。子ども達が自然の「循環」の仕組みを体験できる取り組みとなっています。
「給食に使用した野菜や果物の皮が年間4トン出るそうなのですが、それらをコンポスターで堆肥化しているんです。できた堆肥を校内の畑に利用して子ども達が大豆を育て、それを給食で食べるところまでできたんですよ」と、久我さんは嬉しそうに話してくれました。
今では地域を越えてコンポスター設置に関する相談が入るようになり、それぞれの事情・要望などから考えるべき課題なども見えてくるのだとか。そこから新たな発見も生まれ、次の取り組みにつながるという良い連鎖を生み出しているようです。
「COMPOS」は二槽式のコンポスターとして特許を取得
横浜国立大学附属鎌倉小学校に設置した巨大コンポスト
資源を循環させるしくみを提供し続ける
持続可能な環境を実現するためのより良い仕組みづくりを行うため、今後も自社だけではなく、多くの方々と協力しながら活動を進めていきたいと鈴木さん。農薬を使用しない野菜・植物の栽培、堆肥作りの取り組みにもさらに力を入れ、多くの方が自分で実践できるような仕組みを開発し、届けていきたいといいます。
「植物を庭で育てるだけでなく、育てながら植物と一緒に暮らしていくお庭を提案する。お客様が自分で生活に取り入れられる仕組みを生み出し、さらに自然へ循環する。そうして皆さんの“自然と共生する暮らし”へと繋げていきたい。私達が提案していることが暮らしの中で当たり前になったら嬉しいですね」と鈴木さんと久我さん。
自然と共に暮らす豊かな未来の実現のため、私達一人ひとりが庭という最も身近な場から環境について考え、行動することの大切さを伝えている逗子ガーデン。その想いは広がり、変化を生み出しています。
逗子ガーデンの畑で作られた農薬不使用の野菜
逗子ガーデン
神奈川県逗子市久木4-17-49
[営業時間]
8:00~17:00
[定休日]
日曜、祝日
[連絡先]
Tel:046-873-4128
[WEBサイト]
HP:https://www.zushi-garden.co.jp/index.html
ライター情報
菊池沙央理
茅ヶ崎の海のそばで愛する家族と生活中。コーチングを用いながら「対話」を通して、人の想いに触れ、人の魅力を表現する事が好きです。言葉でたくさんの事を伝えていきます。
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