その仕事が街の雰囲気を変えていく。鎌倉・二階堂を拠点に活動する小さな工房「atelier 2F(アトリエニエフ)」

鎌倉市二階堂を拠点に活動する、「atelier 2F(アトリエニエフ)」という小さな工房があります。こちらでは、オリジナルのプロダクト(暮らしの道具)作りやオーダーメイドによる家具製作、住宅や店舗のリノベーションも手がけ、昨今おしゃれな店が集まり盛り上がりをみせている、鎌倉・梶原口エリアにあるお店「イマジネーションコーヒー」「べーぐる もへある」や、小町通りにある「WELKAM(ウェルカム)」の内装や什器を手がけるなど、知る人ぞ知る工房です。

今回は「atelier 2F(アトリエニエフ)」代表の山田千尋さんにお話を伺いました。

素材感と遊び心が同居する魅力

atelier 2Fは、木・布・金属・グラフィック・イラストを組み合わせたものづくりが特徴です。

「ハンドメイドも好みますが、柳宗理やイームズなどの工業プロダクトにも影響を受けています」と山田さん。自身は、ハンドメイドと工業プロダクトの中間あたりを狙った仕事を意識されているとのこと。

シンプルさの中どこか遊び心が同居したようなatelier 2Fのものづくりには「ドイツの工業デザインのような機能美も、アメリカのポップな雑貨の無駄な遊びも好き」という山田さんならではの感性が反映されています。

  • コーヒーフィルターをセットするとヨットの形になるスタンドは、イギリスの雑誌に掲載されたことも

  • 人気商品の、鎌倉市をかたどったカッティングボード

これらオリジナルのプロダクトは、「イマジネーションコーヒー」や「WELKAM(ウェルカム)」で取り扱いがあり、「鎌人市場(かまんどいちば)」や「葉山芸術祭 青空アート市」などにイベント出店された際にも購入することができます。

  • イマジネーションコーヒー店内にある、atelier 2Fプロダクトコーナー

  • 自作屋台カートで、イベント出店することも

atelier 2Fのはじまり

atelier 2Fは、勤め人でありながらクラフト作家としても活動される奥様がお手伝いをされることもありますが、基本的には旦那様の山田千尋さんが鎌倉を拠点にお一人で活動されています。

もともとは業務用キッチンメーカーで営業をされていたという山田さんですが、納品の手伝いをする機会があり、その際の現場作業がとても楽しく感じたとのこと。「自分は、こういう手を動かす作業の方が好きなのでは?」と考えるようになった時に、偶然雑誌で家具職人をしている方の記事を見つけます。

やがて、自分も家具を作る仕事をしたいと思うようになった山田さんは、まず家具デザインの専門学校へと入学し、続いて職業訓練校にも通うことに。その後は家具職人としての経験を積もうと、横浜の老舗家具メーカーに入社。8年ほど働いていましたが、勤め先が倒産…。それならばと、当時建設中だった自宅の一部に作業スペースを設け、思い切って独立することにしたとのこと。

その際に名付けられた“atelier 2F”という屋号は、活動拠点となる自宅が二階堂にあるのと、山田さんが手がける“furniture(家具)”と、奥様が手がける“fabric(布)”の、二つのFがあるという理由によるもので、ロゴをデザインしてくれた友人(WELKAMの店主)がつけてくれたそうです。

  • 家具や内装は、予算や希望によって仕様を細かく相談できる

  • ワークショップ用に作成されたノベルティバッジ

  • 船便のコンテナをイメージしたという什器

  • 音楽スタジオを手がけたことも

一軒の店が、街の雰囲気を変えていく

独立した直後に、店主と友人という縁から「イマジネーションコーヒー」の内装を手がけることになります。atelier 2Fにとって、初めての内装の仕事でした。
「イマジネーションコーヒー」があるのは、鎌倉駅からバスで10分ほどのところにある梶原口という場所。こちらは、今でこそわざわざ遠方から人が来るようなお店ができたことで注目されるエリアとなっていますが、もともとは鎌倉といってもこれといった観光名所もない普通の住宅街。

「梶原口を見に行った時に、大きな道路(梶原大通り)があるのに落ち着きがあるからか、かつて旅したアメリカ郊外の風景と似ていると感じました。アメリカには、一見何の変哲もない郊外なのに、内装デザインがしっかりと作り込まれて、洒落ている店が二、三軒並んでいるような場所があって、それがとてもいい感じなんです。梶原口でも、一軒そういう店ができれば、それをきっかけにして同じような場所にならないかなという期待はしていました」と、山田さん。

その後、山田さんの期待した通り、梶原口には、“オーガニックでジャンキー”をテーマにしたケーキ屋兼カフェの「ポンポンケークス」、麻婆豆腐で大人気の「かかん」、再びatelier 2Fが内装を手がけた「べーぐるもへある」と、内装デザインが丁寧に作り込まれた個性豊かなお店の出店が続きました。そして、いつしか“梶原カルチャー”と呼ばれて独特な雰囲気が形成されていくことに。呼び水のような役割を果たした「イマジネーションコーヒー」店主の人柄や取り扱う珈琲豆の質の良さもあるでしょうが、atelier 2Fの木材やガラスなどを巧みに使った内装デザインの力も大きかったのではないかと思います。

  • イマジネーションコーヒーの店内

  • べーぐるもへあるの店内

atelier 2Fの今後としては、団地リノベや宿泊施設の内装など幅広く手がけてみたいとのこと。編集部が腰越で運営する民泊施設「SHONAN garden HOUSE」のことを逆取材されるなど、常に好奇心旺盛でチャレンジ精神に溢れるatelier 2Fの工房からは、今後も興味深い仕事が産み出されていくと思います。

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