古くて新しい湘南移住の選択肢 〜団地リノベ暮らし

ITの進化や新型コロナウイルスの影響もあり、働き方や世の中の価値観が大きく変わろうとしています。感染症対策としてテレワークが導入され、自宅にいる時間が長くなった方も多いでしょう。このような仕事のスタイルは今後定着化していくだろうといわれており、テレワークが実現する「職住融合」として、湘南エリアに注目する人はさらに増えていくのではないでしょうか。

湘南移住というと何かとハードルの高いイメージもありますが、昨今、費用を抑えて手軽に移住する手段として、「団地リノベ暮らし」が注目を集めています。今回は、湘南エリアの団地リノベーションを多数手がけられているアーチアンドドリーム代表の比嘉恵美さんにお話を伺いました。

古いものと、新しいものが融合する

「リフォームのように古くなった一部を直すのではなく、リノベーションは中を完全に作り直します」と比嘉さん。既存の内装をどのように改修するかではなく、すべてをゼロから考え直し、これから住む人の暮らしやすさに合わせて間取りや機能を刷新し、”新しい価値”を生み出すことがリノベーションであるとのこと。

古い団地は建物の造りがとても頑丈なものが多いそうです。しかし、部屋の内装や間取り、設備などはその建物が建築された当時の暮らしに最適化された作りとなっています。リノベーションすることによって、まだ充分使える団地の建物自体は活かし、現在の暮らし、住む人のライフスタイルに合わせて作り変えていく。古いものと新しいものの良い部分を融合させることができるのです。

  • キッチンのビフォアー、薄暗かったキッチンも......

  • キッチンのアフター、モダンで明るい雰囲気に

  • 木枠ミラーとサブウェイタイルを使った洗面所

  • 壁のペイントやロフト設置などカスタマイズも

団地の古さが、良さにつながっている

「住居を探すにあたり、利便性やステータスにしばられない、プライベートの充実を重視した人が増えていると感じます」と語る比嘉さん。

新築は内装や設備も新品ですが、平均的な使いやすさ、平均的なデザインで、入居者一人ひとりのライフスタイルにあったものだとはかぎりません。古い団地は、築年数が経過しているという理由で比較的安価に購入することが可能です。物件購入にかける予算を抑えられる分、リノベーションに自分のこだわりをより多くつめこむ、間取りや内装を変えて、よりプライベートの充実につながる住まいづくりができるようになります。

若い世代にとっては古い団地自体に新鮮さを感じる人もいるそうです。「アンティーク家具や古着などと同じくビンテージ感を求める感覚で、団地を気に入る方も多いですね」と比嘉さん。新しいマンションにはない、廊下・階段・窓枠などで随所に見られるレトロ感のあるディテールが若い世代の心をつかむことが多いのだとか。

年月が経過していることにより、建てられた当時の植栽が今ではとても豊かに成長し、ご近所見守り防犯活動や自治会イベント開催など良好なコミュニティも育まれていることが多く、そういった部分も若い世代をひきつけているようです。

団地の住環境も、見直されている

団地の住環境が、実はとても良いのだと気づく人も増えてきています。そもそも、団地は戦後の住宅不足を解決し、なおかつ健康的な生活ができる住まいを広めるという使命をもった、国の一大プロジェクトから始まっています。そのため、建物と建物の間は遊歩道や公園が配置されているなど、敷地内の空間にゆとりがあります。間取りに関しても、居間だけでなく台所や風呂など水回りにも窓があり、南北に風の通り道が確保され、通風・採光が充分なよう計算されています。

また、駅から遠い立地でも敷地内にバスロータリーがあるなど、意外と利便性には問題ないものが多いとのこと。駅から離れる分、購入費用が安くなることに加え、静かで自然豊かになることもあり、昨今はあえて駅から遠い団地を狙う人も増えているそう。実際に住んでみたらバス便が豊富で、雨の日や荷物が多い時に活用できて便利だったという声もあるようです。

団地リノベを成功させるヒント

「大事なのは、耐震性と管理体制がしっかりした団地を選ぶことですね」と語る比嘉さん。

特に耐震性はとても重要だそうです。古い耐震基準で建てられた団地でも、五階建て以下の低層で、壁で支える壁式構造だと、現在の耐震基準と大差ない安全性があるとのこと。実際、過去の大震災でも壁式構造の団地は、地盤が不安定だったもの以外はほとんど被害をうけなかったそうです。

さらに管理が良いこと。管理体制が良好だと外壁を定期的に塗り替えたり、屋上の防水をしっかり行なっているなど、建物を長く住み続けていけるように維持・管理されているそうです。

住民が愛着を持って住んでいる団地は、おのずと植栽の管理状態も良くなり、それは周辺の景観維持にもつながります。また、良好なコミュニティも形成されているそう。湘南エリアにもそのような団地はありますかとお伺いしたところ、「平塚〜辻堂の間にいくつもあります。団地のイメージがあまりない逗子や鎌倉にもありますよ」とのことでした。

  • 団地リノベについて熱く語ってくれた比嘉さん

  • 施工中の様子

欧米では100年以上経っている集合住宅はざらにあります。コンクリートの保全技術なども年々進化しているのにもかかわらず、日本ではスクラップ&ビルド、壊しては建て壊しては建てという傾向がまだ根強くあります。

しかし、湘南には新しいものを取り入れながらも、神社仏閣や古民家など古いものも大事にする文化があります。そんな湘南の文化とぴったりな感じもする団地リノベ暮らし。湘南移住に興味のある方は、選択肢の一つとして検討されてみてはいかがでしょうか。

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