“そこそこ”元気で健康なオトナでいい。フィットネスナビゲーター・ミチガミカオリさんの遅咲き鎌倉ライフ

あなたは「鎌倉市在住のパーソナルトレーナー」と聞いて、どんなイメージを抱きますか?

引き締まったカラダと日に焼けた肌。趣味は平日休日問わずサーフィンやランニング。海のそばのライフスタイルを、アクティブに満喫している人……そんなイメージを抱く人がもしかしたら多いかもしれません。

今年54歳になるミチガミカオリさんは、まさにそんな人。2017年に江ノ島のそばで女性専用のトレーニングスタジオ「NALU Training studio」をオープンし、これまでに約400名の女性にパーソナルトレーニングを提供。さらに近年は湘南・鎌倉エリアでスポーツイベントも定期的に開催する、通称 “フィットネスナビゲーター” です。

運動もしないし、趣味もない人からしたら、カオリさんはちょっと引け目を感じてしまうような存在かもしれません。ただし彼女が、元々は東京生まれ埼玉育ちで、学生のときはほぼ帰宅部で、就職してからも運動は遊び程度で、本格的にトレーニングを始めたのは鎌倉に引っ越したあとの40歳を過ぎてから……そう聞くとどうでしょう?

決してスペシャルではなかったカオリさんがスポーツに出会い、運動を通して自らと向き合いながら、遅咲きの鎌倉ライフを満喫しているエピソードには、あなたの日常をちょっとだけ変えるヒントがきっとあるはず──。

元・帰宅部で、都内勤めの会社員が出会った“湘南”

カオリさんは東京都港区南青山のご出身。バリバリの東京っ子として生まれ、小さいころから運動は好きだったものの、スポーツなどでずば抜けて活躍するほどではありませんでした。高校生のときに親の仕事の都合で埼玉県へ引っ越し、高校は都内にある女子大の付属へ。なんとなく野球好きだったカオリさんはソフトボール部に入部するも、先輩後輩の上下関係に嫌気が差して即退部。そこからは、運動と距離を置く青春時代を過ごしていたそうです。

その後に入った短大ではサークルでテニスやスキー、卒業後に就職した東京のプリンスホテルでは社員の福利厚生でスキーやゴルフを嗜む程度。今のアクティブなカオリさんの片鱗はまだ見えてきません。現在に繋がる最初の転機となったのは1995年、ナイキジャパンに就職したこと。そこでは周りが〇〇大学〇〇部出身のようなスポーツエリートばかりで、それまで生きてきた中で一番スポーツが身近な環境へと足を踏み入れました。

それでもナイキジャパンには「入りたいと強く思っていたからではなく、正直なところコネで入りました! ハハハ」と当時を思い出して笑うカオリさん。ここまでのエピソードですでにわかるのは、カオリさんは生まれ持って運動の才能があったわけでもなければ、10代・20代でスポーツの才能を開花させたわけでもないということです。

そしてその後ついに、カオリさんが現在に至るまで人生を共にする、“湘南”という土地に出逢います。

「それまで埼玉に住んでいたので、単純にまず海に憧れるじゃないですか。あとナイキで働いているときに、湘南エリアに住んでいる人が多くて、あるときからその人たちと週末にこっちで遊ぶことが増えたんです。それで少しずつ街のことに詳しくなっていって。あと特に今スタジオのあるこのあたり(藤沢市片瀬海岸)って、湘南エリアの中でも都内へのアクセスが良いので便利なんです。そういった理由で、住むならこのあたりがいいなと思って移住しました」

とはいえ引っ越したときはまだ都内に通う会社員で、毎朝7時前には家を出て、家に帰る頃には日付が変わることも多い生活。遊べるのは土日ぐらいで街に詳しくもなれず、友達に紹介してと言われても、“住んでいながら雑誌のHanakoを買って勉強しなければいけないぐらいだった”とカオリさんは当時を振り返ります。

それでも都内で仕事をして、最寄りの片瀬山駅の改札を出た瞬間に触れる風と香り、そして「帰ってきた……」という安堵感は、カオリさんにとってONとOFFを切り替える大切なファクターとなっていたそうです。

40歳を過ぎてから運動に目覚め、パーソナルトレーナーに

カオリさんは結果的に、片瀬山駅から都内に通う生活を約12年続け、ナイキジャパンに関しては20年間勤務し、2016年に退社しました。そして2017年に女性専用のトレーニングスタジオ「NALU Training studio」をオープンさせます。

なぜカオリさんはトレーナーに転身し、スタジオオープンに至ったのか。

その理由は、40歳オーバーの年齢や変わる体型と向き合う経緯にありました。

「私は40歳を過ぎてから本格的に運動を始めたんですね。このあたりは山もあるのでトレイルランニングなども始めたのですが、自己流だから怪我ばっかりで……『せっかく始めたのに何してるんだろう……』と思ってたときに、たまたま知り合いがパーソナルトレーナーをやっていたのでお願いしてみたんです。そこからは本格的なトレーニングを始め、食事もカーボローディングを試してみたり、自分でトレーニングプランを立ててみたり。あとから思うと、そうやって計画を立てて頑張るのは好きだったみたいです。それを続けていたら体型も変わって、ますますのめり込んでいきました。そうしているうちに、これは自分の知識だけにしているのはもったいないなと思い始めたんです」

そのときカオリさんは45歳を越えていたことに加え、この先のセカンドキャリアで会社員を60歳まで勤め上げることにも疑問があったそうです。それならと思い立ち、会社員の仕事をする傍でトレーニングや食事などの勉強に取り組み、トレーナーの資格も取得。自身のトレーナーの先生に指導方法などを教わりながら無償で友達にレクチャーするなど、自らがインプットしたものをアウトプットしていく活動を徐々に始めました。

「会社を辞めたら即実行ですよ! アハハハ。私はもうどこの会社にも入らずに、こっちで頑張ろうって。結果的にそこまで勉強していたおかげで、すんなりセカンドキャリアへシフトチェンジできました。だけど、ここをオープンした当初は『誰か来ないかな……』ってボーっとする日が多かったです。もちろん今でもそういうときはありますけど、でも何でしょうね、自分は根拠のない自信だけはあって。今の方が、お客さんが辞めちゃったらどうしようみたいにビビってます」

「NALU Training studio」では、40代・50代を中心としたあれやってみたい&これやってみたいと思う方々がメインターゲット。ひとりひとりのカウンセリングを経て、目的に応じた自由度の高いフィットネスプログラムや、近隣の海や山など鎌倉のアウトドアを楽しめるアクティビティメニューなどを提供しています。

「NALU Training studio」の“NALU”はハワイ語で“波”を指し、転じて波に乗って“成功をつかむ”という意味もあることから、カオリさんは当初「なりたい自分のカラダになる」をコンセプトに掲げていました。しかし、トレーニングを続けていく中での自身の体験や実感から、今は別のコンセプトになっているそう。

「自分はけっこういい歳になってから運動を始めたのですが、自分がやりたいことをやり続けられるカラダが作れたことで充実感のある毎日を過ごせていますし、40歳だろうが50歳だろうが『今の自分が一番楽しかったらいいじゃん!』と思うんですよね。”なりたい自分のカラダ”となると、どうしても若かりしころ……となってしまいがちなのですが、私くらいの年齢になると、“機嫌よくカラダを動かせる”ってことだけで爽快だし、毎日が楽しく思えてくるんです。なので今のコンセプトは、『各々のライフスタイルに合わせた、機嫌よく動くカラダづくり』です」

スポーツの語源は、日々の生活から離れる“気晴らし”

カオリさんは近年、湘南・鎌倉エリアで運動とアクティビティを絡めたイベントを積極的に開催しています。

「スポーツという言葉の語源は、ラテン語で“deportare”。それは日々の生活から離れることで、“気晴らし”とか“楽しむ”といった意味なんですね。ただし日本の場合、スポーツはトレーニングをして鍛えるといった、どこか堅いイメージの方が強いと思います。でも私たちはもういい大人ですし、スポーツは気晴らしでいい。そういう気持ちでスポーツを楽しんでほしいですし、そういうメッセージを伝えたくて。いいオトナこそスポーツをやった方がいい──私は本当にそう思いますね。私と同年代でも、もしかしたらあと50年は生きていかなきゃいけないかもしれないのに、もう歳だから無理無理って言っていたら、『じゃああと50年を何して生きていくの……?』って思うことがあります。さまざまイベントなどを通じて、鎌倉を“そこそこ”元気で、“そこそこ”健康な大人がたくさんいる街にしていきたいなって今では思っています」

カオリさんがここ最近、定期的に開催するイベント “Kamakura chill walk club” は、「健康なオトナの歩いた距離が社会に貢献できる」をテーマにしたチャリティウォーキングイベントです。

その一環として来たる10月10日(日・祝)の体育の日に、健康なオトナが身体を動かして社会に貢献するイベント「スポ+レク+チル kama chill 秋のイベント」を江ノ島・片瀬海岸東浜で開催とのこと。

▼イベントについて詳しくはこちら
https://www.facebook.com/events/802063364136096/?ref=newsfeed

“そこそこ”元気で健康なオトナでいい。無理をしないライフスタイル、それこそ鎌倉の街によくお似合い。

紆余曲折を経て、遅咲きで鎌倉ライフを満喫しているフィットネスナビゲーター・ミチガミカオリさんのポジティブなヴァイブスに触れ、インタビュー後、もうすでにカラダを動かしたくなっている自分がいました。

人気記事ランキング

湘南ガーデンの人気記事ランキング

人気の画像