湘南の有機農家さんを訪ねる

半農半Xのライフスタイルで営む「長谷園」

湘南の山間地帯で、果樹園と野菜畑を営む長谷さんを訪ねました。

農を志してからわずか4年ですが、「トニーさん」の愛称で多くのコアなファンを持つ農家さんです。農家としての顔以外に、庭づくり・土づくりの講師や、お医者さんやお料理家さんと共同で、農や食を伝えるイベントを行う、いわゆる半農半Xの暮らしを営まれています。

  • 北側斜面には野菜を中心に、谷を挟んで南側斜面にはミカン畑が広がります。ミカン畑の丘に登ると、海まで見渡せる心地よい場所。

この日、トニーさんに会うために訪れた中井町の畑では、冬野菜の収穫が終わり、菊芋を掘っているところでした。菊芋は近年、トニーさんが力を入れている作物のひとつ。血糖値を下げる効能が注目され、また美腸美肌効果などから、健康意識の高い顧客に人気があります。

  • 長い茎を持つ菊芋。強い繁殖力で、第二次世界大戦中には日本の食糧危機を救った歴史もあります。

野菜や土との会話が、好循環を生む

ここでは、無農薬、無化学肥料の炭素循環農法*が行われています。作付けの計画は、おおまかにしか立てず、種採りをした野菜や、土地に合っているものを中心に、直感で作りたいものを育てているのだとか。

(*炭素循環農法とは、炭素と窒素の割合を一定にして土の発酵を促し、土の中の菌や微生物の働きを活発化する農法。結果、虫が近寄りづらくなり、うまみのある野菜ができる。)

就農して初めの1年は、きっちりとした年間の作付け計画を立て、その通りに管理していたそうです。けれど、思った通りに育たないと焦ってしまい、じっくりと観察ができなくなる。試行錯誤の結果、翌年からは計画を考えるより、土や野菜とじっくり向き合う時間を作り、また会話を楽しむようになりました。楽しむほどに野菜が育つ、そうすると、感謝する余裕が生まれる。そんな好循環に気づいたそうです。

導かれるように迎えた転機、そして農家の道へ

「もともと野菜は、人のために作られたもの。だから人の働きかけに反応します。人がたくさん畑に来ると、よく育つ。だから、もっとこの畑に人を呼びたいんです。」

そう穏やかに話すトニーさんが、農を志す礎となったのは、茅ヶ崎で飲食店を経営していた日々にあります。

地産の有機野菜や発酵食を中心とした健康ごはんを提供するカフェをオープンしたのは、震災で安全な食について考えるようになったから。それまでは、茅ヶ崎に住みながらも、横浜の商社に勤め、昼も夜もなく働いていたといいます。

カフェでは、毎朝契約農家さんの畑に赴き、野菜を収穫し、そのままお店に持ち帰って調理していました。徐々に、畑で過ごす気持ちよさ、野菜作りの楽しさに魅せられていきました。そして収穫した野菜を食べる美味しさと、身体が感じる喜びをお客さんと共有できるのは、格別でした。そんな折、炭素循環農法に出会い、農家の道へと突き進むことになります。

  • 毎年、入れ替わる野菜。芽キャベツは今年の新入りです。

  • 野菜の周りには、お花やハーブも植えられています。多様な種類があった方が、野菜も良く育ち、人にとっても心地よい空間となります。

ライフスタイルとしての農で、豊かさを紡ぐ

そんなトニーさんが、いま見ている世界。そしてこれから実現したいこと—。

「湘南では、ライフスタイルとしての農業を定着させるのが良いと思います。海と畑、山という最高の環境があり、自然になじんだライフスタイルができます。朝サーフィンをして、昼は畑に行ってごはんを食べる。僕は最近、全然サーフィンできてないんですけどね。」照れながら笑います。

「家庭菜園でも良いんです。みんなが農的生活を送り、半生産者となる。そこから、微生物や植物たちと同じように、与え合いの世界が自然にできてくると思います。日本の文化や生活は、農業を中心に育まれてきました。その豊かさを取り戻すことにもつながると思います。」

一方で、これから、中井町でもどんどん高齢化や耕作放棄地が増えていくことに、懸念を持ちます。

「より多くの地域の人に農に携わってもらうと同時に、外からも人を呼ぶ仕組みが必要になります。都内からもアクセスが良いので、今後、観光農園としてこの場所を開いていきたい。そういう働きかけを、行政とともにやっていきたいです。」

異色のバックグラウンドを持つからこそ、包括的な考えが生まれ、半Xの活動に共感を呼ぶ。その活動を通して、社会へと視野が広がる。そんな好循環を感じました。

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