地元の皆様に愛されて55年 平塚「とんかついちかわ」

現在ほどテレビにグルメ番組は多くなく、SNSやYoutubeも存在しなかった頃、良い店や美味しい店の評判は主に常連客の口コミで広まりました。今回ご紹介する「とんかついちかわ」は創業からそんな時代を経て、50年以上にわたり愛され続けているお店です。

駅チカの雑踏にひっそりと佇む

場所はJR平塚駅から歩いてすぐ、紅谷パールロードの入り口あたりから路地を曲がると、遠くから看板を見て食欲に火がつきます。ガラスケースの食品サンプルを見るだけでまるで昭和にタイムスリップしたような気分、さて何を食べようかと迷うのが楽しいです。

  • まるで昭和にタイムスリップしたような気分

  • 定食メニューが豊富なのは地元の働く人達に支えられている証拠ですね。

創業は1969年、以来地元の皆様の支持を受けながらお店を営んでいます。創業者は現店長のお父様で、当初はお母様と二人でお店を切り盛りしていたとのことです。現在の店長である息子さんが継ぎ、息子さんの奥様もお店を手伝っています。昔からの常連さんも多く、味で店を判断してほしいという、昔気質の家族経営のお店です。

なにもかも期待通り

ノスタルジックな雰囲気と共に清潔感も感じられる店内、掃除がとても行き届いているのがひと目で判ります。小上がりがあるのは地元の寄り合いには便利ですね。こんな造りにも店の歴史を感じます。

お店の壁には、定食をはじめとするさまざまなメニューがずらりと掲示されています。普通に取材するなら売れ筋の「とんかつランチ」なのでしょうが我慢していた空腹にこのメニューを見せられたらたまりません。普段ならロースか上ロース定食を注文する私ですがこの日はカツも海老フライも食べたかったのでD定食にしました。ランチと普通のロースカツは肉の量が違うだけで肉質は一緒です。同行の妻は初夏にさっぱりとおろしカツ定食を選びました。

  • 掃除がとても行き届いているのがひと目で判る店内

  • 定食の種類の多さに嬉しい悲鳴が出そうです

庶民的なカツのイメージを裏切る上品な口当たりでした

私は普段はロースしか食べません。肉の美味さは脂身の旨さだと考えているからです。ひれかつは歯が丈夫でない方、脂身の嫌いな方の食べ物だと思っていました。

結論から言うと、プロの腕に全面降参しました。脂のないヒレ肉が此処までみずみずしいとは想像出来ませんでした。しかも中は「はやり」の余熱に頼るピンク色ではなくきちんと中まで火が通っている揚げ具合です。海老はプリプリほくほくでした。

そして揚げ物のしつこさ皆無の軽さです。揚げ油はラードではないそうですが、それ以上は企業秘密のようで聞きそびれました。パン粉もはやりの粗挽きではなくきめ細かいタイプです。食感の軽さの要因かと思いました。

  • D定食

妻のおろしカツも一切れ貰って食べましたが想像の斜め上の旨さでした。夏場には揚げ物に大根おろしは定番中の定番です。これなら高齢の方も食べられると思います。

  • おろしカツ定食

そして特筆したいのが味噌汁です。この日提供された味噌汁に使うしじみは一瞬アサリかと思う大きさです。自分が好きなので良く判りますが、サイズの大きなしじみはとても高価です。普通は定食の味噌汁にはコストが合わないと思います。昔からの常連さんが喜ぶので、市場で手に入る時は出すようにしているとのこと。

これも地産地消!?この地域ならではのビールへのこだわり

缶ビールでも瓶ビールでも工場で醸造してから日にちが経たない方が生ビールに近い風味があります。特にアサヒは「ビール工場出来立てのうまさ」を商品化して限定発売する力の入れようです。平塚は丹沢山系の名水の里で知られる地域に近く、お店では地元と言える南足柄の工場で作られたビールを提供しています。揚げたてのカツと新鮮なビールのコラボレーション、たまりません。

33年の間お店を見守り続ける「守り亀」

店内の水槽にはなぜかワニガメがいます。ランチタイムで混雑して来たので詳しい事は伺えませんでしたが、恐らく今のご主人が子供の頃、お父様が買って来たのではないかとのお話でした。驚くべきことに、今年で御年33歳になられるとの事で、「招き亀」としてお店の歴史を見守り続ける「守り亀」なのでしょうね。

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