湘南談義録 -SHONAN casual minutes-

「自分たちで作ったほうが面白そうじゃないですか?」対談:大西芳実x武田双雲(第2回)

湘南・鵠沼海岸にオープンした、オーガニックメニューを取り扱うカフェ「Chikyu(地球)」。書道家・武田双雲さんが開いたこのお店に、鵠沼の人気店「麺やBar 渦」の店主・大西芳実さんが訪れました。

大西さんが持ち寄った自家製麺をきっかけに、第1回では「オーガニック食材を使ったラーメン作り」が話題に上がりました。今回もそのラーメン作りを軸に、「Chikyu」のテーマでもある“オーガニックへの想い”にも触れていきます。

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「自分の子どもに安心して食べさせられるラーメンを」と思っています(大西)

双雲:
オーガニックの定義はJAS(※農林水産省による規格)が定めたものがあるんですけど、僕らはそこにはこだわってないんです。

製造過程で化学製品を明らかに使っていないものだけ! とかじゃないし、あんまり完璧主義になりたくなくて。神経質になっちゃうと表情が暗くなるんで、うるさいオヤジにはなりたくない(笑)

でも、日本の人も(違いが)分かるんですよね。ここに来たお客さんがコーヒーやワインを飲んだり、パニーニを食べたりすると、みんな違いに気がつくんです。

本当に心から感動してると、体が動くからいいですよね。縁にもつながっていくというか、自分たちが何かしようとしなくても、感動することでつながっていってね。

大西:
僕なんかは作るものに反映されますね。こうやって話して、楽しいなって思えると。

  • ▲ 大西芳実さん(「麺やBar 渦」「麺や 渦雷」店主)

双雲:
この話をすると人に笑われちゃうんですけど、自分で書いたものに感動して自分で泣いちゃうことがあんですよ。だって、職人さんが墨を作ってくれてさ、僕も母親から教えてもらったこの腕で書いてさ……って、もうブワーッと感動してきちゃって。

ちょっとナルシストっぽいところはありますけど(笑)、それが一番いいんじゃないかと思うんです。「凄いの出来たんです、見てくださいよ〜」みたいな。

大西:
わかりますねー。僕も昔は自分のために(ラーメンを)作ってましたけど、自分に子どもができたこともあって、いまは「自分の子どもに安心して食べさせられるものを作りたい」って思うんです。

双雲:
あぁ〜いいですねぇ、「子どもに食べさせたくなるラーメン」。僕と同じオーガニック的な志向ですよ。

大西:
出汁をキチッと取ってると、塩分ってそんなに必要ないんですよ。「ラーメンは塩分が高い」なんてよく言いますけど、ウチのラーメンは他のところに比べると低いと思うんですよね。塩味じゃなくて、旨味で出させていただいてるので。

ここまで整ったラーメンなら、アメリカでもグワーッと波が来ると思う(エディー)

双雲:
エディーさんも元々スパイスオタクで、料理人だったわけじゃないんですよ。「このスパイスをどうやって活かそうか?」っていうところから料理に入ってきた人で。

大西:
その感覚は我々ラーメン屋も同じですね。「この香り……どうする!?」みたいな(笑)

双雲:
「とんでもないものを手に入れてしまった!!」みたいなね(笑)

大西:
「醤油? 塩? まぜそば? つけそば?」「じゃあ1回焚いてみよう」「あぁ、じゃあこれはアレと合わせよう」みたいに悩んだりして(笑)

双雲:
日本の料理って、すっごく細かいじゃないですか。アメリカはダーッ、ブワーってしてるんですけど、日本人の料理はまぁ繊細で。

大西:
僕も1ヶ月ホームステイしたことがあるんですけど、肉の上に肉! 肉! 肉!でした(笑)

双雲:
だから、素材が美味しいと逆に美味しいんですよ。日本人の感覚的な“調理”っていうのがアメリカにはないのかも(笑)すごい人はすごいんですけどね!

エディー:
すごい人は確かにすごいね。いやぁ、でもここまで整ったラーメンだったらアメリカでもグワーッと(大きな波が)来ると思うよ。本当に。

双雲:
普通か、ちょっと美味しくないぐらいの豚骨ラーメンを出してるお店がヒューストンにあったんですけど、行列でしたからね。

大西:
豚骨か……豚は宗教上の理由で食べられない人も多いですよね。その点、鶏を食べちゃいけない宗教ってないので、鶏ならやりやすいと思います。それと野菜も使って。

エディー:
鶏と野菜に関しては、アメリカならチョイスできるぐらいあるからね。だから難しくはないと思うんだ。

それと、あの街には「食事大好き、料理大好き」っていう面白い人たちがいるんですよ。

ミチコ:
アメリカの人たちって本当に面白くて、好きなものは好きになるし、表現もすごいよね。(彼らがラーメンにハマれば)すごい勢いでウケると思う。あと、あの街はハリウッドのセレブが日帰りで来るようなところなんですよ。

双雲:
そう。だから、LA(ロサンゼルス)で口コミで広がっていったら、みんながバーッてやって来ると思う。

ずーっと改善していける環境さえあればいい(双雲)

大西:
そしたら、ウィート(小麦)フリーの麺も作っといたほうがいいかもしれないですね。小麦のアレルギー持ちの人が日本よりも多いですし。

エディー:
そう、そう。グルテンフリーだとすごく喜ばれますよ。

双雲:
グルテンフリーで美味しいものが作れたら面白いですよね。それじゃあさ、実際にエディーさんと実験で作ってもらおうよ。

大西:
僕製麺機持ってるんで、材料があれば麺作れますよ……?

もう出来てるやつじゃなくて、自分たちで作ったほうが面白そうじゃないですか? 麺を作ったら、ある程度は商品にして、あとはお客さんに配っちゃえばいいですよね。

双雲:
スープも面白そうですよね! 何から攻めるか、みたいな。

でもやっぱり、現地の人々に根ざしたものにしていきたいですね。こっちの文化も持ちながら、向こうの文化もリスペクトして。たとえばあの街は海が近いから、向こうの魚から面白い出汁とかが採れるかもしれないし。

  • ▲ 武田双雲さん(書道家、左)とエディーさん(「Chikyu」シェフ)

双雲:
僕が向こうで個展を開いた時は、ぜんぶ向こうで制作したんですよ。向こうの素材で作ったり、向こうの人と話をしたりしながら書いたりして。ただ単純に僕らが日本文化を持ってったってつまんないですからね。「どうだ!」って見せつけるみたいになっちゃうし。

まぁ、もちろん美味しけりゃそれなりに流行るんだけど、向こうの要素を入れると楽しくなってきそう。向こうの文化を掘れるじゃないですか。

大西:
メルボルンではそこまでやりきれなかったなぁ……当時は“ザ・ラーメン”にしてくれ、っていう要望を受けていたので。

双雲:
ビジネス的な成功を目指すというよりは、楽しいことを継続的に深掘りしてやっていきたいですよね。だから、ずーっと改善していける環境さえあればいいと思っています。

僕ら(「Chikyu」のメンバー)は、カメラマン、モデル、書道家で、みんなクリエイター出身なんですよ。だからギャラリーも兼ねたい。世界で唯一のオリジナルデザインを作りたくて。その中で日本文化やラーメンの文脈も取り込めたら。

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現地の食材や文化を取り入れながら、日本のラーメンを提供するギャラリー。アメリカに開くお店のイメージが少しずつ具体的になってきました。

次回は“ものづくり”にフォーカス。双雲さんと大西さんのクリエイティビティと情熱に迫ります。

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