【湘南で暮らす人々】

観た人が笑顔になるコミカルなイラスト ~茅ヶ崎が生んだ、次代のアーティストRyu Ambeさん

海などの豊かな自然やスローな生活リズムのためか、湘南には多くのアーティストが暮らしています。Ryu Ambeさんもその中の一人。彼の作品を見れば「あ、あの絵の!」と思う方も多いはず。

先日、藤沢の8Hotelで開催された個展も評判を呼ぶなど、注目と話題を集めているイラストレーターRyu Ambeさんの素顔に迫ってみました。

「bowl market juice & deli」はRyuさんの作品でいっぱい!

お話を伺うために取材の約束をすると、Ryuさんが指定した場所は、茅ヶ崎にある「bowl market juice & deli」。茅ヶ崎駅からサザンビーチをつなぐ茅ヶ崎のメインストリート・雄三通り沿いにあるお店です。

早速駅からお店へと向かうと、通り沿いにあるお店の壁や植物プランターにはRyuさんの楽しげなイラストがあちこちに。そしてお店の入り口に、ひときわ大きくイラストが描かれたお店を発見。そこが「bowl market juice & deli」でした。

お店の中に入るとまたビックリ。店内にはアメコミを思わせるようなキャッチーでコミカルなイラストがあちこちに。イラストだけではなく、ガラス瓶や石、そしてステッカーなど、さまざまなものに絵が描かれています。

「実はこのお店が私のアーティスト活動を広げるきっかけとなった場所なんです」とRyuさん。今までは机の上で紙などに作品を描いてきたのですが、このお店の壁に絵を描かせてもらったことで、制作のフィールドが大きく広がっていったそうです。

  • 70年代の茅ヶ崎をイメージした作品

  • ステッカーの販売も

原体験は「トムとジェリー」

では、そもそも絵はいつ頃から描き始めたのでしょうか。「幼稚園児くらいの頃から、「カートゥーン・ネットワーク」というアニメチャンネルを毎日見ていました。中でも『トムとジェリー』の作者として知られるハンナ・バーベラさんのものが大好きで、日本のアニメとは表現が違っていて、コミカルでジョークが効いている一方でちょっと下品だったり。そんな部分に惹かれました」とRyuさん。

そんな幼児体験もあり、子どもの頃からノートや教科書はいつも落書きのイラストで埋まっていたといいいます。やがて中学校では美術部に入り、ますます絵の魅力にのめり込みんだRyuさんは、デザイン美術コースのある橘学苑高校へと進み、絵とデザインを本格的に学んだそうです。

青春時代は絵の世界にどっぷりと

しかしやがて試練が訪れます。「高校卒業後は美大進学を考えていたのですが、それがかなわず、やむなく服飾系の専門学校へ進みました。服のデザインもデッサン力が必要なので通用するんじゃないかと…。でも服のデザインは絵を描くことだけではなく、機能性などさまざまなことを複合的に考えなければならず、そうした能力がボクには全然なかったんです」。

やがて専門学校を卒業後、就職したもののそれもうまく行かず…。そんなままならない状況を打破するため、一念発起してカナダへワーキングホリデーを使って留学し、英語を学ぶことにしました。この旅立ちがRyuさんの気持ちに大きな変化をもたらすことになるのです。

  • わずか数分でこんなイラストも!

外国人との交流で、絵の楽しさを再認識

「外国人と言葉がうまく通じない時にイラストを描いてみせると、『ああ、それね』と言いたいことが伝わり、そこが糸口となりコミュニケーションがとれるのです。そんなことを繰り返すうちに、子どもの頃のような純粋に絵を描く楽しさを思い出し、初心に帰ることができました」と当時を振り返ります。

帰国後はアルバイトを続けながら絵を描き続け、InstagramなどのSNSを使って作品を発信していると、やがて「いいね!」がたくさん付くように。そうして、先述した「bowl market juice & deli」での作品発表へとつながっていくのです。

SNSで「いいね!」が次々と!

「自分では何気なく描いていたつもりでしたが、ある時、雄三通りを歩いていたら、前にいた女の子が急に立ち止まり、私の絵を見てスマホで写真を撮ったんです。その瞬間を見たときに『うわー!オレの絵を!!』って感動しました」(Ryuさん)。観る人を惹きつける画風はすぐに話題になり、ムラサキスポーツが地元のアーティストとコラボしてつくる「LOCAL VIBES」というTシャツでは、2018年の神奈川エリア代表としてRyuさんのイラストが使用されています。

3月末に藤沢の8Hotelで開催された個展では、会場となった8LOUNGEの壁面に絵を展示したほか、Ryuさんのイラストが描かれた石やビンが客席を彩りました。

  • 8LOUNGEで開かれた個展

  • 客席頭上には、照明とともにイラストの描かれたビンが

「CHILDISH MIND」がコンセプトのRyuさんの作品の特徴は、コミカルでポップな色合い、そしてオリジナリティあふれるキャラクターたちの生き生きとした表情にあります。「目に力を持たせることで、作品が生きてくるのです」とRyuさん。「例えばこの石ですが、この目を描くだけで石のカタチが顔の輪郭に見えてきたりしません? そうした石やビンなど、何でもないものが絵を描くことで擬人化できるのは楽しいですよね」と笑います。

  • 石がひとつの生き物に見える不思議

  • ただのビンも、ポップでキャッチ―に

世界を旅して、独自の世界観をイラストに

さて、そんなRyuさんは今後、どのような活動をしていく予定なのでしょうか。「この雄三通りをもっと賑やかにしようという試みもあり、今後もこの通りに絵を描いていく予定です。やっぱり自分が生まれ育った茅ヶ崎が大好きで、よそから帰って駅に降り立ち、むわっと鼻をつく潮の匂いを嗅ぐとほっと安心するんですよ」とRyuさんは語ります。

  • 雄三通りのあちこちにイラストが

「今後は世界を旅してその町ならではの風景を絵に残していきたいですね。そんな自分の足跡を積み重ねていって、いつか作品集が作れたらなとも考えています」と、あくまでもマイペースなRyuさんですが、大きな音楽イベントでも作品を手掛ける予定もあるなど、まさに大ブレイク前夜のご様子。さらなる活躍と飛躍を期待したい、アーティストです。

※最後の動画はRyuさんが「bowl market juice & deli」の店頭壁画を描いている様子をタイムラプスで撮影したものです(動画提供:bowl market juice & deli)

湘南で暮らす人々

都心から電車で1時間と、遠いようで実は近くにある海辺の街。豊かな自然に囲まれて過ごす人々の表情もまた、おなじように豊かです。

本コラム『湘南で暮らす人々』では、この地で生活を営む人々にフォーカス。「やっぱりこの街が好きだ」というみなさん、そして「いつかはここで……」と憧れを持つみなさんと一緒に、多彩なライフスタイルを覗いていきたいと思います。

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Ryu Ambe(リュー・アンベ)

1989年生まれ。茅ヶ崎で育ち、キャラクターデザイナーとして茅ヶ崎を中心に精力的にアーティスト活動中。「Childish Mind」をコンセプトに、キャラクターをコミカルに、ジョークを交えて表現。個展だけでなく、さまざまな企業ともコラボレートして作品を発信している。

[ウェブサイト]
https://ryuambe.com
Instagram:@ryuambe

※取材協力:bowl market juice & deli(http://bowljuice.jp)

ライター情報

ユゲヒロシ

ユゲヒロシ

鵠沼海岸生まれ、鵠沼海岸育ち。バックパッカーとして世界を旅した後、広告制作会社に。2003年よりフリーランスのライター&ディレクターに。趣味はキャンプ、ロードバイクなど。B・C級グルメ、お酒が大好き。妻と3人の子どもとつましく(?)暮らす。

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