自然の恵みを美味しく楽しむ。葉山の仕出し屋「ICHI」が発信する食育とこだわりが詰まったお弁当

お弁当を買って家で味わう機会が多くなった今、揚げ物ばかりのお弁当にちょっと飽きてしまった、栄養が偏っているかな…なんて感じている方もいるのではないでしょうか。そんな中、葉山の仕出し屋さん「ICHI」では毎日食べても飽きのこない身体にやさしいお弁当を作っています。

週4日間だけ販売するお弁当は、予約で完売してしまう日もあるほど。美味しいだけでなく、素材から調味料に至るまで国産にこだわる徹底ぶりが人々に支持されているようです。その背景にはオーナー・佐藤市子さんの食に対する並々ならぬ情熱がありました。

  • 「ICHI」のスタッフの皆さん(手前がオーナーの佐藤市子さん)

「ICHI」の身体にやさしいお弁当

「ICHI」のお弁当は日替わりで、肉をメインとしたものが2種類、魚をメインとしたものが1種類、計3種類が作られています。また、量を少し抑えた「ちょこっと弁当」も人気です。

ご飯は酵素玄米と黒米から選ぶことができます。とりわけ「ICHI」の酵素玄米は大豆の原種である黒千石大豆も入っており、モチモチとした食感が美味しいとお子さんにも大人気なのだそう。

日替わり弁当の魚はその日の仕入れで変わるため、楽しみにしているお客さんも多いようです。筆者はカマスの香草焼き弁当を購入したのですが、野菜もふんだんに入っており、栄養バランスもバッチリ。酵素玄米は、噛めば噛むほど玄米の美味しさが口の中に広がり、その人気の理由が分かりました。

  • 栄養バランスを考えた各種日替わり弁当(850円税込み)

  • 取材日の日替わり弁当の1つ「カマスの香草焼き弁当」。酵素玄米と黒米から選べるのも嬉しい

“食を大切に”という想いの出発点となった出会い

市子さんが「食」を考えるようになったきっかけは、自然療法家で知られる東城百合子さんとの出会いだったといいます。ご自身のお子さんが幼稚園の頃、友人に誘われて東城さんが開催する料理教室に参加し、その「食」に対する想いに感銘を受けたのだとか。

若い頃に重い肺結核を患った東城さんは、昔ながらの玄米自然食に立ち戻ることで病を克服した経験から、“自然に沿った生活”と“食べ物の生命を大切にいただくこと” を、94歳で亡くなられるまで伝えてきました。

東城さんのいう「食育」とは、現代ではおざなりになっている「愛情と手間」を大事にすること、そして食べ物を含め日々の生活を大切にしながら自然に生きること。

市子さんは東城さんのこうした想いを受け継ぎ、地に足の着いた「食育」を目指すことに。自宅のキッチンを改装し、料理教室を始めることを決意します。料理教室に参加されるお母さん達と接する中で、多くの方が“食べる側の意識をしっかりと子どもに伝えたい”、“家族の健康をサポートしたい”という想いを持っていることに改めて気づかされたといいます。

ただ、日々忙しく仕事をするお母さんが増え、”手作り”が難しくなっている現状も。そこに対して何かできないかと考えた市子さんは“仕出し”という形での食の提供を思いつきます。

「お料理を作る時間がなくてお惣菜を買うにしても、少しでも身体にやさしい無添加のものを提供しよう、そう考えたら“仕出し”という形が一番理想だと思えたんです」と市子さん。

料理人・中川さんとの出会い

市子さんの目指す「食育」の考えに賛同した人々が、仕出し屋「ICHI」スタートにあたって集まってきます。料亭出身の板前・中川昌明さんもその一人。日本料理店での食材廃棄の多さに疑問を持っていた中川さんは、“食を大切に”という市子さんの想いを受け、参加を決めたといいます。

中川さんも食が身体をつくるという考えを大切にしており、お父様が健康を損ねた際には食を大切にサポートされたそうです。その想いは「ICHI」のお弁当づくりでも同じ。多くの人に、身体の基礎となる「食」を届けています。

とても息が合っている市子さんと中川さんですが、時には意見が食い違って衝突することもあるそう。和食に集中したい中川さんに対して、洋食も加えたい市子さん。話し合いの結果、お弁当は和洋取り揃えたラインナップとしたのだとか。互いの意見を聞いて尊重しあい、納得のいく結果がお弁当に反映されています。

  • 仕込み中の中川さん(右)。調理場は早朝4時から稼働。1日に販売する60食のお弁当のほか、予約注文の仕出し弁当の仕込みをスタッフ4名で行う

  • 料亭での経験も生きる美しい仕出し弁当

  • 見事な手さばきで包丁が入れられていく

  • 美しく並べられた切り身はまさに職人技

妥協せず手間をかける

国産の食材にこだわっているところも「ICHI」のお弁当の特徴です。豚肉は生産・加工・流通・販売までを自社で手掛けている平田牧場産のものを使用。鶏肉は長州鶏、魚は三浦の漁師さんからその日の朝に仕入れたものを使っているといいます。

また、調味料はすべて無添加のものを使用しているのだとか。スーパーでは見かけないような調味料の数々が調理場に所狭しと並んでいます。リーズナブルに抑えたお弁当の値段と釣り合わないのでは、という疑問を市子さんに尋ねてみました。

「ギリギリですね(笑)。ただ、採算よりも、多くの人に手間をかけた美味しいお弁当を食べてもらいたい。過去に原価を考えて価格を抑えた調味料を試してみたのですが、やっぱり味がボケてしまって…今使っているものでないと駄目だという結論に至ったんです」と市子さん。

  • 旬を取り入れた美しい仕出し弁当。素材にはとことんこだわっている

  • 料理の基本となる調味料は国産・無添加のもの

食材の無駄は出さず美味しく調理

仕出し弁当は、味だけでなく「見た目」も重視されるもの。飾り切りや面取りなどで美しく仕上げる過程でどうしても食材の余りが出てしまうものですが、この余った部分も捨てることはせず一品料理に生まれ変わらせるのが市子さん流。

そんな市子さんの姿勢をスタッフの皆さんは「筋の通ったケチり方」と表現。食材に対してもやはり“食を大切に”という市子さんの考えが反映されています。

  • 食材は一切無駄にしない市子さんのポリシー

どんなときにも寄り添ってくれる「ICHI」のお弁当

「ICHI」のお弁当は、月曜・火曜・土曜・日曜日の週4日、調理場のある市子さんの自宅のほか、「葉山ステーション」、逗子の「アルICHI」などで販売されています。お客さんのほとんどがリピートで購入してくれているのだとか。

いつもお弁当を購入してくれるお客さんからいただいた「ICHIのお弁当は、体調が悪い日でも食べられるんだ」という言葉は市子さんにとってとても嬉しい言葉だったといいます。

また別のお客さんからは「ICHI」のお弁当を手に取るようになって食生活が改善されて体重管理がうまくできるようになったという言葉も。安心で美味しいお弁当を求め、ベビーカーを押した若いお母さん達が訪ねてくる姿も多く見られます。

市子さんの食育への想いが「ICHI」のお弁当を通して、お客さんに伝わっているようです。

  • 逗子の販売所「アルICHI」

  • おかずだけのセットも人気

皆に健康になってほしい

今後、販売場所を増やす予定はあるのかを尋ねてみたところ、中川さんからは次のような答えが返ってきました。

「手を広げすぎて目が届かなくなることは避けたいんです。また、対面で販売することで、お客様へ食材のこだわりを紹介したり、疑問に答えたりできるメリットもあります。なので、今は現状のスタイルでやっていきたいと思っています」

お弁当を通して“食の大切さ”を伝えている「ICHI」。今後は、コロナ禍でお休みしている自宅での料理教室も再開したいと市子さんはいいます。

“良いものを食べて健康になってほしい”という市子さんの想いはさまざまな形で広がっていきそうです。こんな時代だからこそ、心と身体が喜ぶ「ICHI」のお弁当で食を楽しんでみてはいかがでしょうか?

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