【移転】本鵠沼のアットホームな薬膳料理屋「【和】nico(ニコ)」。こころと身体にやさしい品々を。

本鵠沼駅前の商店街にひっそりと佇む、和のテイスト満載でこぢんまりとしたお惣菜屋さん。それが、今回みなさまにご紹介する「【和】nico」です。

このお店が提供しているのは薬膳料理。少し手が出しづらいイメージがありますが、【和】nicoが提供しているのはむしろわたしたちにも馴染みのある、家庭料理を中心としたメニュー。店主は「みんなが必要なもので、みんながつくれるもの。だから目を向けてほしいなと思うんです」と語っています。

お店のテーマとなっている「ごはんを食べてにっこり、そしてまた和(あ)える」というフレーズ通り、【和】nicoはおいしい料理と人々のつながりに出会える、アットホームなお店となっています。本鵠沼の近くを訪れた際はぜひ立ち寄ってみてください。

アットホームなお店で味わう、アットホームな薬膳料理。

戸を開くと、すぐにカウンター席。木の温もりに溢れた店内の雰囲気がみなさまをお出迎えします。アットホームな空気漂うこの【和】nicoでどこか懐かしいムードをひとたび味わえば、近くを通ったときにはふらりとnicoに立ち寄りたくなってしまう。そんな素敵な場所です。

自分のお店を持つのが長年の夢だったという、店主のごとうゆみこさん。子ども8人という大家族で育ち、小さい頃から食への関心が高く、高校時代にはすでに「将来どんなお店を開こうかな……」と考えていたそう。その想いがつながって、料理雑誌の編集を経験したこともあるんだとか。

【和】nicoで扱うのは薬膳料理。とはいっても、食卓にも馴染みのあるメニューが多数です。ゆみこさん曰く、「薬膳という言葉には“楽”という漢字が入っています。だから、ご飯は楽しく食べてほしいなって」。こうした想いが込められたラインナップとなっています。

この日は「パクチー水餃子」と「サムゲタン」をいただきました。「パクチー水餃子」はゆみこさんのお父様が作っていたものからインスパイアされたそうです。餃子といえば肉のイメージですが、この一品はむしろ野菜が多めでヘルシーな仕上がりに。

口に運んでみると、自家製の麻辣油に味付けされたピリ辛感が広がります。青山椒や麹によってマイルドなものに仕上がっているので、続いてやってくるジューシーな肉汁が醸し出す食感の引き立て役に。辛味と旨みの調和がとれた、味わいのある水餃子となっています。

「サムゲタン」のポイントはずばり鶏肉。沸騰しない程度の温度で3時間じっくりと煮詰めた鶏肉は、素材本来の味わいと柔らかさが見事にマッチしています。また鶏肉を甘酒に浸すというひと工夫を加えることによって、口当たりも良い仕上がりに。トロトロなご飯と相まって、のどをするっと通っていく食感は絶品です。

こうした品々をご家庭でも作ってみたくなったら、是非ゆみこさんに聞いてみましょう。「より多くの人々が食に目を向けるように」というゆみこさんの願いから、レシピから調理のコツまであらゆることを教えてくださいます。

  • ▲ バランスの取れた「パクチー水餃子」

  • ▲ 「サムゲタン」は工夫が凝らされた一品

【和】nicoにまつわる、“つながり”のアンソロジー。

お店のオープンには、ちょっとしたエピソードがあります。ある日、ゆみこさんは本鵠沼駅前の商店街の一角に貸し店舗の看板を見かけましたが、その看板は程なくして取り下げられていました。以来その場所が気になってしばらく様子を見ていたのですが、ひと月経っても変わったことがなかったので、看板を掲げていた不動産屋さんに話を聞きに行ってみました。

話を聞いてみると、どうやら不動産屋さんの話では大家さんが貸しに出すのをやめてしまったのだそう。しかしゆみこさんはあの場所に運命を感じていたので、大家さんに直接掛け合うことにしました。

かつて小料理屋さんを営んでいたという大家さんと話し合いをした結果、最終的には場所を貸してくれることになりました。それからは店舗の改装や料理の準備など、とても慌ただしい毎日を過ごしたといいます。

そして2008年4月、いよいよ【和】nicoがオープンしました。オープン以降とても多くのお客さんがお店にやってきたため、ひとりでは捌ききれなくなってしまったことも。お店を持つということがはじめてだったので不慣れなこともたくさんあったそうですが、同時に嬉しい悲鳴も上げていたようです。

そんな風にして、日々歩みを続けてきた【和】nico。ゆみこさんはこれまでを振り返って、ふたつの印象的なエピソードを聞かせてくださいました。

ひとつ目のエピソードは、近所に住むある男の子とのお話。この子は親御さんとよくお店にも来ていた子なのですが、ある日ひとりでお店にやってきました。話を聞いてみると、家の鍵を忘れて中に入れなくなってしまったのだそう。そして、親御さんが家に戻るまでこのお店にいるよう言われた、とのことでした。

ゆみこさんはこの時、胸が熱くなったそうです。というのも、その男の子にとってこのお店が安心していられる場所だと思ってもらえたからでした。

そしてもうひとつのエピソードは、未だ記憶に新しい3.11を通じた出来事です。周囲がパニックに陥っていた中、自分にできることを考えたゆみこさんは、みんなのためにお店をなるべく開くことにしました。

すると、たまたまお店に居合わせた人同士が「あの時はどうしてました?」というように声を掛け合って、特に知り合いでもなかったのにもかかわらず自然と会話を始めるという光景を何度も目にしたそうです。

この経験を通して“人のつながり”ということを意識するようになったゆみこさんは、本鵠沼駅前の商店街の連合にも顔を出すようになり、以来お店同士の“ヨコのつながり”を広く築いていったそうです。

「“人のつながり”って、人を明るい気持ちにさせると思うんです」。3.11を経て人々がつながりを意識しはじめ、そこから商店街がより明るくなった印象を受けた、とゆみこさんは語っています。

  • ▲ 息子さんがふらりと立ち寄ったり…

  • ▲ 常連さんがひょっこりと訪れることも

抜けるような空の青さと、自然のバランス。こころのテンポもゆっくりになる街に暮らして。

そんなゆみこさんが湘南にやってきたきっかけは、当時すでに湘南に住んでいたご主人との結婚でした。ご主人はもともと山形の生まれなのですが、サーフィンが好きで、上京後もしばらくは八王子から通っていたほどだといいます。ちなみに、【和】nicoで使われている食器類の多くはご主人の作品。持ちやすさにこだわって作りこまれていてとてもよく手に馴染みますので、ぜひ手に取ってみてください。

「湘南は空が抜けていて、青いですね」と語るゆみこさん。生まれ育った東京に行くこともしばしばあるそうですが、湘南に戻ってくるとふと空を見上げて、そのたび心に安らぎを感じてホッとするのだとか。20年以上この街に住んできて、歩くスピードすら変わってしまったそうです。

都会の喧騒を離れ、すっかり湘南のムードに溶け込んだゆみこさん。湘南の好きなポイントには「海があって、山もちょっぴりあるバランス」を挙げました。いろいろなものを流してくれる「海」と、反対にチャージしてくれる「山」。この両方が程よく調和している環境というのはなかなか見当たらない、とゆみこさんはいいます。

人のつながりと、ホッとするムード。ゆみこさんが大切にするこの2つのポイントは、気さくに笑顔を振りまく彼女の人となりだけではなく、お店の佇まいにもよく表れています。とっても家庭的でヘルシーな薬膳料理が味わえる、温もりに包まれた【和】nicoの暖簾をぜひ一度くぐってみませんか。

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