葉山からジャマイカの味を届ける:日本オリジナルスコッチボネットホットソースの物語

みなさんは、スコッチボネットホットソースを知っていますか?スコッチボネットホットソースは、カリブ海やジャマイカで人気のあるスコッチボネットペッパーというトウガラシを使ったソースです。ジャマイカでは、このソースはスーパーで手に入り、どの家庭にもある定番の調味料です。

私がこのスコッチボネットホットソースを知ったのは、鎌倉の三留商店さんで紹介されたのがきっかけです。実際に購入して食べてみると、思ったほど辛くないけどフレッシュな調味料だと感じ、興味を持ちました。

このホットソースについて詳しく知る為に、Instagramやオンラインショップで情報を探しましたが、商品は購入できても、その背景を知ることはできません。そこで、三留商店さんのアドバイスもあり、葉山で農薬を一切使わずに育て、無農薬、無添加の安心、安全のホットソースを作っているという「スコッチボネットジャパン」の中村さんに直接連絡し、直接話を伺う機会をいただきました。

スコッチボネットホットソースと中村さんとの出会い

中村さんは、親の仕事の関係で3歳までイリノイ州シカゴで過ごしました。高校時代には、葉山にある有名な海の家「OASIS」でアルバイトを始めます。「OASIS」は長い歴史があり、音楽のステージも併設されている場所です。そこで、レゲエミュージシャンの先輩たちと出会い、その影響でレゲエやジャマイカ文化に興味を持つようになりました。やがて、中村さん自身もDJとして活動を始めます。

その中で先輩達に「人生経験として若いうちに一度はジャマイカに行きな!」と背中を押され、21歳の時、単身ジャマイカへ。興味があることは、すぐに行動する中村さん。そこで、現地の文化や音楽に触れる中で、ソウルフードのジャークチキンとスコッチボネットホットソースと出会います。

「僕は、あまり辛いのは強くないんです。でも、おいしいと思いました。この味をいつか日本に持ち込みたいなとも思いました。」

うっすら思い浮かんだ未来、またこの感動が中村さんのスコッチボネットホットソース製造への道を開くことに繋がりました。

輸入できないなら自分で育ててしまおう!

中村さんは、レゲエのDJやバンド活動をしながら、夏の間は海の家「OASIS」で働く日々を過ごしてきました。30代半ばになると、音楽活動と両立できる仕事を探す中で、スコッチボネットソースとの出会いを思い出します。

早速、輸入に関して本格的に調べ始めたところ、手続きが思った以上に煩雑で断念しかかっていたという中村さん。そんな時、運よくジャマイカの友人から苗を手に入れることができ、「輸入が難しいなら自分で育ててしまおう!」と思い、もらった苗を育ててみることに。

「ちょうどその頃、「OASIS」が新しい試みとして自家栽培を始めることになり、その農園の一角を借りることができたのもタイミングが良かったですね。」

気候の違いなどから当初は栽培が難しいと考えられましたが、トウガラシはナス科の植物であり、25~30℃の気温や日本の一般的な弱酸性の土壌、そして良好な日当たりがあれば、適した生育環境が整います。その結果、日本の環境でも順調に育ち、無事に収穫を迎えることができました。収穫した種を使って翌年以降も栽培を続け、現在では葉山の地で何世代にもわたるスコッチボネットを育てています。

無農薬、添加物なしを選べるなら選ぼう

中村さんはこれまで添加物に特にこだわりはなかったそうですが、自分で商品を開発できるようになったことで、添加物を使うかどうかを自由に選べるようになりました。

中村さんの周りにはオーガニック志向の方が多く、中村さん自身も無理のない範囲でオーガニック製品を選んでいるそうです。これは、ジャマイカの人々が化学物質を避け、自然と調和した生活をしていた姿に影響を受けたためです。

「本当に悩みました。価値を感じてもらえる商品と、量産して安価で広まる商品、結局前者を選びました。自分が作ったものを食べてもらう時には、体に入った後のことも考えたいと思ったからです。」

ソースの原料として使用しているタイムは、エジプトのミイラ保存に使われるほど防腐効果が高いと言われています。添加物を使わなくても、タイムを用いることで1年間の保存が可能となりました。

中村さんに、彼を突き動かすものは何かと尋ねてみました。

「自分で作って、おいしいものができたということが大きかったですね。そうでなければ、ここまで頑張ることはできなかったかもしれません」

中村さんの物語の第一章は、スコッチボネットを栽培し商品化して人々に届けることでした。それを叶えた後の新たな挑戦が始まる予感がします。

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