コロナに負けない。給食用のパン屋さんのコッペパンを使った「総菜パン」で地域の飲食店を応援〜「中華の店 味の古久家」

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止に伴い、私たちの暮らしにも大きな影響が出ています。なかでも大きな打撃を受けているのが、外出自粛により営業が制限され来客・売り上げともに激減した飲食店で、多くのお店が存続の危機にさらされています。

そんな暗澹たる自粛ムードの中、一時閉店することなく、さまざまなアイデアや機転でこの苦しい現状を打破しようと試みているお店も数多くございます。そこで今回は、コロナに敢然と立ち向かい、“アフターコロナ”を見据えて戦うお店をご紹介いたします。

きっかけは、「仕事のなくなったパン工場を何とかしたい」

まず、いち早くコロナ対策を打ち出したのが、創業より70年以上を数える老舗「中華の店 味の古久家」。“藤沢のソウルフード”として世代を超えて愛されている藤沢を代表する名店が中心となって、新たに「総菜パン」の販売に取り組んでいます。

市内の小中学校の休校による給食の中止によりパンが販売できなくなったパン屋「ロワール光月堂(藤沢市長後)」が、パン工場を救うために新たにつくったコッペパンを利用したもの。“コッペパンを格安で販売します”というロワール光月堂のSNSでのつぶやきを見た「味の古久家」の小林剛輔代表が、“それならば私たちも協力し、場所を提供して販売いたします”と手を挙げたのだそう。

しかし、ただコッペパンを売るのは面白くないと考えた小林さん。そこで、「味の古久家」の看板メニューでもある餃子をコッペパンに挟んで店頭販売すると、その『餃子パン』はたちまち人気に。さらに“売上低下で困っているお店に声をかけて、さまざまなお惣菜をパンにはさんで販売したら、お店にとってもお客さんにとってもプラスになるのでは?”と考え、さまざまなお店に話を持ちかけました。

  • 当初はコッペパンを売るだけだったのが…

  • すべての始まりとなった『餃子パン』

藤沢の飲食店が次々と、独創的な総菜パンを提供

そんな小林さんの提案に藤沢の多くのお店がすぐに反応。藤沢のイタリアン「タントタント」は人気のパスタメニュー『アマトリーチャ』をはさんだ『タント風アマトリーチャパン』、蕎麦屋「笊麦 ZARUBAKU」は『おからと高菜のコッペパン』、「焼き鳥 自遊人」は『やき鳥パン』を、さらに飲食店だけにとどまらず「NPO地域魅力」からは藤沢地場グルメの『藤沢炒麺』をはさんだ『藤沢炒麺サンド』など、バラエティ豊かな総菜パンが店頭に並ぶことに。現在では、計11店舗が参加するまでになりました。

これらの総菜パンは、毎日午後3時より「味の古久家」店頭にて販売を開始。間隔を保ちつつぽつぽつと人が並び、次々とパンは売れていきます。多い日には1日で計180個も売れることもあるそうです。入荷は当日店頭に並んでからのお楽しみということで、売り切れ次第終了。

  • 店頭には、さまざまな総菜パンがずらり

  • 販売開始の午後3時には多くの人々が

ちょっとした軽食や、家族みんなでワイワイと

パンは給食用ということもあり、やや小ぶりで柔らか、ふっくらとした感触がどこか懐かしい印象。バラエティ豊かなお惣菜は見た目も舌も存分に楽しませてくれ、ちょっとした軽食や、色々なパンを切り分けて家族でワイワイとつまむのにもいい感じです。

  • 切り分けて家族で楽しむのもいいですね!

今よりも、アフターコロナを見据えて取り組みたい

始めは単にパン屋さんを助けられたら…という思いで始められたという総菜パン。かつてない取り組みということだけでなく、参加しているお店はいずれも藤沢の人気のお店ばかりということもあってたちまち評判となり、新聞やTVなどのメディアでも取り上げられました。

「けれども正直、このパンの売り上げがお店の売り上げに直接大きくは貢献しないでしょう。けれどもこの総菜パンをきっかけに実際のお店へと出かけ、総菜パンだけでなくそのお店が販売しているテイクアウトメニューを購入するという方もいます。そこまでの波及効果がなかったとしても、総菜パンを通じて“こうしたお店があるんだな”と知ってもらうだけでもいいと思うんです。そのように、この場をその店なりに上手に利用してお店を宣伝し、コロナ収束後を見据えて活用してほしいんです」(小林さん)

  • 「2週間~1ヶ月後の最悪を想定して動いています」と小林剛輔代表

さらに「共通前売りお食事券」もスタート!

こうした小林さんの飲食店活性化のアイデアはこれだけに留まりません。「コロナに負けない藤沢の店たち実行委員」を独自に立ち上げ、提携する飲食店で共通で利用できる、「共通前売りお食事券」を発行したのです。

このシステムは、参加店舗で共通に使える「共通前売りお食事券」を印刷し、参加店舗で販売することで、店舗が現金を手にしてもらうというもの。お食事券の利用は、コロナが収束し通常営業を再開するころ(※現時点では7月半ば~後半を想定)から利用が可能。利用者は、お食事代金の半額までを商品券で支払うことができるというものです。

  • ノスタルジー感のある「味の古久家」も営業中

  • 店内の衛生管理は1月終わりからと、早くから着手

アフターコロナにいち早く立ち直るために…

これにより、お店側は当座に必要な現金を元手にして現状の危機を乗り切り、さらにアフターコロナのお店再開後、お食事券を利用するお客さまを集客の起爆剤にできるのです。また、お食事券の利用にはお食事券単体だけでなく必ず現金も払うシステムも秀逸で、再開後でも前払いのお食事券だけでなく、現金収入があるというのがポイントです。

もちろん、利用者である私たちにもメリットがあり、お食事券を利用する際、お店ごとにさまざまなキャンペーンが実施される予定とのこと。自分の好きなお店を助けながらさまざまな特典を受けることができる、まさに一石二鳥のシステムなのです。

この「共通商品券」のシステムにも、総菜パンと同様に次々と手を挙げるお店が現れたことから、加盟店の拡大と各店に割り当てられる商品券の上限価格(現在50,000円)の引き上げを可能にするため、小林さんはクラウドファンディングを設立。立ち上げ直後から次々に賛同者が集まり、わずか3日間で目標金額を達成。想像を超える支援の手が、次々と差し伸べられています。

共通前売りお食事券について詳しくはこちら

  • 共通前売りお食事券は500円単位で、各加盟店で購入可能

藤沢に育てられ、藤沢とともに生きる

しかし、小林さんは何故ここまでの行動力のみならず、周囲の人を惹きつける魅力があるのでしょうか。実は、彼こそは毎年行われる「ちょい呑み」の発起人・主催者であり、自らが中心となってお店とお店をつないでいる方なのです。

「藤沢の飲食店はお店同士が個人的につながっている一方、商店会には多業種が加盟している関係上、迅速でフレキシブルなアクションが取りづらい部分もあります。そこで“ちょい呑み”をきっかけにつながった飲食店同士なら、共通した意識と目的のもとスピード感を持って対応できることがあるはず。小回りが利く私たちだからこそ、行政や商店会などが届かない“すきま”を埋めるような活動が可能なのです。私たちは70年以上、藤沢という地域に育てられてきました。その地域に恩返しをしたいという一方で、地域が廃れては私たちも存在しえなくなります。地域のためにも、また私自身のためにも“元気な藤沢”を必ず取り戻さなければなりません。そのための努力は決して惜しみません」と小林さんは語ります。

私たちにできることとは?

こうしたお話を聞いて、現在は行政などからの支援金など、“人が何をしてくれるか”に頼ってしまいがちですが、“自分が人に何をできるのか”を考えることの大切さ、そして“情けは人のためならず”という言葉の重みをひしひしと感じました。最後に、小林さんのこの言葉を改めて思い出しました。

「はっきり言って現実は本当に大変で苦しいですよ。でも暗いことばかり考えていても仕方ない。何か新しいことに積極的に取り組めば、ちょっとの間でも嫌なことを忘れて前向きにいられるじゃない?」

いつ終わるとも分からないコロナ騒動ですが、きっと今できることが私たちにもある。そして、それがいつかどこかで誰かのために、ひいては自分のためになるのでは…。そんな強い思いが、心に深く刻まれました。

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