葉山・御用邸そばのコーヒー屋さんに漂う、心地良い波のリズム。「THE FIVE★BEANS(ザ・ファイブビーンズ)」。
湘南・葉山の御用邸からすぐ近く、「THE FIVE★BEANS(ザ・ファイブビーンズ)」はこぢんまりとした佇まいです。ここのコーヒーを求めて様々なところからお客さんがやってきますが、初めて訪れた人は気づかずに通り過ぎてしまうことも。
世界中から仕入れたコーヒー豆を自家焙煎して提供するこのお店は、まるでオーナーの森嵜さん自身を表しているかのよう。お店にまつわるストーリーを少しだけ紐解いてみることにしましょう。
“スペシャルティコーヒー”の、その前から。
幼い頃から葉山の穏やかな海と親しんできた森嵜さん。海中の熱帯魚に向いていた興味はやがてサーフィンへとシフトしていき、波を求めて国内のみならず海外まで足を伸ばすようになりました。大学卒業後は冷凍食品の商社に就職したものの、大手冷食メーカーや海外工場での研修で目にした工業製品のような食べ物に違和感を覚え、2年でドロップアウトしてしまいます。
「波のいい日にベストのタイミングで海に行くには独立しかない」と考えた森嵜さんは、手に職をつけるべく様々な業種を転々とした後にコーヒー会社へと就職。インターネットのない当時は限られた情報しか入ってこなかったため、自社輸入豆以外のことは分からないことが多く、自家焙煎店へ生豆を卸販売するのに苦労していました。
そんなあるとき、森嵜さんは1杯のコーヒーと運命的な出会いを果たします。
▲ 生まれも育ちも葉山のオーナー・森嵜健さん。優しい笑顔が特徴的です
「あるとき“カップ・オブ・エクセレンス”(最高品質のコーヒー豆に贈られる称号)の豆が入ってきたので飲んでみたんですが、これがものすごく美味しくて。豆の情報が細かく分かる安心感、品種や精製方法の違いで味が変わるイメージができたんです」と振り返る森嵜さん。“スペシャルティコーヒー”という言葉が日本に浸透する前のことでした。
やがて森嵜さんはコーヒー会社を退職。知り合いのカフェで勤務する傍ら、自宅で焙煎したコーヒー豆の販売も行い、その後2003年に葉山・一色で「THE FIVE★BEANS」をスタートしました。数々のイベントにも出店し、現在の場所へと移転してからまもなく10年を数えます。
▲ コーヒー豆は自家焙煎。現地で収穫から精製まで見てきた豆も
▲ エアロプレスで淹れるコーヒーも召し上がれます
節目ごとにいい出会いがあった、という森嵜さん。この日もニュージーランドからお客さんがやってきて、話を聞けばこれからカフェを開くのだとか。そこで、森嵜さんはお店から歩いてすぐのところにある焙煎所へと彼らを案内することにしました。
「THE FIVE★BEANS」の焙煎所は年季の入った木々で出来た家屋です。築100年ほどの建物で、その場に漂うムードとコーヒーの香りがマッチしていました。異国の地から訪れた2人も、その場にゆったりと流れていた上質な時間と森嵜さんとのコーヒー談義に満足げな様子。
▲ 焙煎機の近くには数々の麻袋が
▲ コーヒー談義にも花が咲きます
「いい波には乗っておかないと」。いつも変わらぬサーファー心。
▲ 地元の友人である「ナカジ美術」製作の漆塗りサーフボード。焙煎所のムードにぴったり
森嵜さんにとってサーフィンはもはや生活の一部。葉山は波が穏やかで、サーフィン向きのコンディションになる日は多くありません。だからこそ、いい波が来た日にはできるだけボードを持って海に出掛けるようにしています。
「いい波があるときは乗っておかないと。次に来るのはいつかわかりませんから」という森嵜さんは、葉山を離れても海さえあればサーフィンを楽しむそう。イベントなどで日本の各地に行くときはもちろん、海外のコーヒー農園を訪れる時も、タイミングと波さえあれば海に入ります。
「外国のいろいろな街を歩いては“ここにお店なんてどうかな?”とか考えてみたりもします」と森嵜さん。サーフィン以外にも楽しみにしていることがあるようですが、選ぶポイントは“サーフィンができる場所”と、根っこの部分はどこに行っても変わりません。
海と薫りとタイミングでできている「THE FIVE★BEANS」。御用邸のすぐそばで、今日も香ばしいコーヒーを用意してみなさまをお待ちしております。
THE FIVE★BEANS
神奈川県三浦郡葉山町一色2037
[営業時間]
11:00〜17:00
[定休日]
火曜、第2・4水曜
[お問い合わせ]
Tel: 046-876-1269
[ウェブサイト]
http://www.five-beans.com/
Facebook: @fivebeans
ライター情報
akira suematsu
湘南生まれ湘南育ちの純・湘南ボーイ。そのわりにサーフィンは未経験だが、鵠沼の海が世界で2番目に落ち着く場所である。まだ見ぬ湘南の魅力、そして多様なライフスタイルのあり方を求めて、ペンとカメラを両手に行動範囲を拡大中。
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