放課後は葉山の海と森へ! 強さとやさしさを育むアフタースクール「TIDE POOL」

葉山大楠山のふもと。かつて御用邸の水源地となっていた下山川へ向かう脇道から森の中へ進むと、ここ一帯は星山と呼ばれるエリア。人里から少し離れた美しい自然の森は、昔から野生の動植物が住処とし、また人々もハイキングをしたり、タケノコ堀りや野草狩りを楽しんできました。小高い山からは星が良く見渡せるロケーションです。

ここ星山は、自然の中のアフタースクールTIDE POOLのあそび場のひとつ。TIDE POOLは、小学1~6年生を対象に放課後の時間を使って、身体と心を育む自然学校です。一般的な学童保育では屋内で過ごすだけのことが多く、退屈を感じている子も多いのだとか。「多感な時期だからこそ、学べることがたくさんある。自然の中でめいっぱい遊べる場所を作りたい。」とTIDE POOLを立ち上げたのは、葉山在住の今村直樹さん。

  • 星山のシンボルとなっているモンゴルゲルは、秘密基地のようでワクワクする雰囲気です。

海の魅力に引き込まれた原点

今村さんは、高校でレーシングカヤックの日本代表選手に。大学でライフセービングと出会い、本場のスポーツ&レクリエーションを学ぶためオーストラリアに留学。在学中からマリンガイドやキッズクラブのスタッフとしてフィールドの経験を積み、自然の壮大さに高揚する解放感や、その中で育まれる人の心と絆に魅了されていきます。

また、現地の子どもと触れる度に、自分の考えをしっかりと持ち、それを豊かに表現する力を持っていることに驚かされたと言います。世界で伸びやかに生きるために、必要な力だと感じたそう。

そのような原体験をもとに、日本で子どもの自然学校を立ち上げるに至ります。

  • アウトリガーカヌーで世界の強豪と戦った日々。(Photo: kenji kinoshita)

  • 自然の中の素晴らしい体験を広めるようと志す、国を越えた仲間とも出会いました。

TIDE POOLの授業

ここで教える教科は、しぜん、せかい、かたち、じぶんの4つ。

「しぜん」のクラスでは、海や森に出かけて様々なアクティビティに挑戦します。自然に近づき、その美しさを感じるとともに怖さも知り、生きていく上で役立つ知識や技術を身に付けます。

「せかい」のクラスは、ボディランゲージを用いながら英語やフランス語で授業が進みます。世界中どこでも通じる言葉を越えたコミュニケーションを学び、俯瞰して世界を見つめます。

「かたち」は、貝や草木など自然の素材やパターンを用いた創作活動を通して、感性や発想力を養います。

「じぶん」のクラスでは、自分の気持ちに向き合い、言葉で表現する力を伸ばします。自分を知ることで、他者に対して真の理解とやさしさを示すことができる、と言います。

「しぜん」を主に担当する今村さんのほか、彫刻家や舞台俳優など各分野で活躍するユニークな講師陣を迎え、授業を展開しています。講師に加えて、バックオフィスを支えるスタッフとともに、子どもたちが伸び伸びと遊び学べる、安心の場所を作っています。

  • どこで何をして遊ぶか、子どもたちの話し合いで決める日もあります。

  • 竹でいかだづくりに挑戦。まずは、竹の選び方や切り倒し方を学びます。

自然の中の学び

授業は海や山など自然の中で行われることが多く「知識だけの学びではなく、身をもって体験することで、感覚や直感を開放してもらいたい」と今村さんは、熱く語ります。「他人にとっての正しさではなく、自分が何を感じるか、自分の感覚に耳を澄ませる場所にしたい。」とも。

また、自然が与えてくれる恵みは無限だが、コントロールはできないものだということを伝えているそう。例えば、海でカヌーに乗ろうとしている日に、風が強すぎるとどうしても危ない。無理して突破するのではなく「今日は、しょうがないね。」と状況を受け入れて、「じゃあ代わりに何をしようか?」と新たな選択を探す。

自然の流れの中で生きていること、自分たちの力ではどうしようもない時もあることに気付くことも、大切な学びだと言います。

ひとりひとりの豊かな未来をつくる

TIDE POOLの子どもたちは、卒業しても関わりを持ち続けることが多いそう。学校の部活がお休みの日には一緒に遊びに、試験前には勉強をしに、単にお昼寝をしに、そして就職の相談をしに、とさまざまなタイミングで訪れます。

「大人との関わりが必要な時期や、距離はひとそれぞれで違う。いつでも子どもたちと向き合える状態でいるための環境を整えています。」

子供時代の安心の場所は、環境が変わり心身ともに大人へと成長していく期間も、拠り所となっているようです。

  • TIDE POOL代表の今村さんと、星山のコーディネーター優理さん。森の風と、鳥のさえずりが心地よいテラスでお話を伺いました。

このような手ごたえを感じつつ、今後の課題も抱えています。今村さんが学んできたような自然の中の遊びを引率できる人材は、日本ではまだまだ限られています。スタッフを育成するとともに、違う分野の人材へも目を向け、自然の中で多様性のある学びを提供し続けたい、と考えます。また進学を考えた時、学校の成績や試験の勉強を重んじる家庭では、高学年になると塾に通うためにやめていく子もいます。自然の中の教えは、本当の強さとやさしさを育み、ひとりひとりの豊かな未来を創るために大切な、生涯を通じた心の学び。親子で参加できるプログラムや、忙しい親御さんが気軽に参加できる場を作り、ご家族との対話の時間を作ることに力を入れていきたいそう。大人と子どもが共に遊び学ぶ場所として、星山の整備を進めています。

変化する時代において、子どもが未来担う社会的役割は今後さらに大きなものに。教育の転換が求められる中、自然の中の学びは生きる上で必要な力を養う、ひとつの柱になると感じました。

TIDE POOLでは、随時見学を受け付け中。HPやFacebookで授業の様子なども公開しています。また、星山でも各種親子向けのイベントが開催されています。気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

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