湘南で暮らす人々

ゴミにしない「ジャンクフラワー」。一輪の花に込めた想い

生まれも育ちも、藤沢の善行。15年以上前から東京に勤務し、グラフィックデザイナーとして活躍する加藤順子さん。

東京は、アートやファッションの最先端。加藤さんにとって多くの刺激やインスピレーションの源であり、切っても切り離せない存在です。「それでも帰ってくるのは湘南が良い。自然があり、ほどよい田舎さ加減が落ち着く。」と柔らかい表情で話します。海がそばにある安心感に癒され、電車から毎朝見える富士山の景色に感動するそうです。

これまで都内でしかほとんど手に入らなかった無農薬の野菜やオーガニックの食品が、ここ5~6年で地元でも手に入るようになったことも、住み続けたい理由だそう。できれば生まれ育った地元のものを食べたい、地元の農家さんを応援したい、という気持ちがあります。

そんな加藤さんには、フラワーアーティストというもうひとつ顔があります。フラワーアートといっても、生花を使った作品ではありません。雑誌からきれいな紙を見つけては切り出し、花びらのようにアッセンブルしたアップサイクル(リサイクルに対して、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを目指した持続可能なモノづくりの手法)の作品です。

暮らしと働き方の転換

この活動を始めるきっかけとなったのは、約10年前。サンゴ礁の美しさに魅せられ、自宅で飼うことができないものか、とリサーチをしていました。世界屈指のサンゴ棚を擁する石垣島にあるサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」に行き当たり、休みを利用して訪ねることに。そこで、驚くべき事実を目の当たりにします。戦後から行われてきた大規模な海域開発や、気候変動の影響で、サンゴ礁が世界規模で破壊されてきているというのです。そして、この破壊はほぼすべてが人間活動によるもの。この時から環境問題がより身近になり、大切な自然を守るため、自分にできることは何だろう?と考えるようになります。

それから暮らしの中でできることを、とオーガニックの野菜を買い、日用品や身に付けるものも環境に配慮した商品を選ぶように。また、環境に配慮したブランドや企業のデザインコンペに集中的に応募するようになります。

同じ頃、NGOグリーンピースとの出会いがあります。グリーンピースは、世界規模の環境問題に取り組み、持続可能な社会づくりを目指す国際的な市民団体。加藤さんは、厳正なる審査を経て加入し、日本支部のデザイナーとしてボランティア活動を開始します。そんな折に参加したメキシコで行われた国連会議では、世界中の活動家やアーティストと交流。欧米で主流となっているサスティナブルなモノづくりにも触れ、デザイナーとして多いに刺激を受けました。そして、現地で出会った日本からの参加者二人が立ち上げたばかりの、生物多様性の大切さを伝えるラジオ番組「いきものラジオ」をより多くの人に伝えていくため、他の参加者メンバーとともに制作に携わるようになります。

  • いきものラジオのクルーで無農薬のお米作りを取材。様々な視点から生物多様性を学ぶことのできる番組です。

サステナブルなモノづくりへ

これらの活動を経て、約3年前からフラワーアートの作品づくりを始めました。サステナビリティという現代の大きな課題に対し、デザイナーとしてひとつの表現に行きついたのです。大好きで捨てられない雑誌を切り抜いて作る花を、“一日一輪”と題してInstagramで発表することで、より多くの人が環境問題に目を向け、楽しくサスティナブルなモノづくりを知ってもらいたい、という想いが込められています。

  • 花作りはデザイナーとしての表現であり、自分自身がモノを大切にし、環境のことを考える思いを強くしてくれる。

  • 花を通して、同じ想いを感じてもらえたら。モノづくりは、人とのつながりも深めてくれる。

今後はワークショップなどを通して、「気軽に環境のことを話し合えるような場を作りたい。」と話します。作品や最新のワークショップ情報は、Instagramのアカウント (@junk_flower) をフォローしてみてください。

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