鎌倉・長谷の喧噪の裏にたたずむ小さな隠れ家「GREENSWARD/SHIBAFU」

鎌倉・長谷。多くの観光客で賑わう屈指の人気エリアですが、大通りを一本入ると、表の喧噪が嘘のように静かで落ち着いた住宅地が存在します。そんな路地裏の一軒家に店を構えるのがカフェ&ダイニングバー「HASE DINETTE GREENSWARD」です。

飲食店から始まったGREENSWARDですが、現在では「Guest house SHIBAFU」も併設し、多くの人の憩いの場となっています。

芝生の上でピクニックを楽しむ、そんな感覚で気軽に使ってほしい

「“GREENSWARD(グリーンスワード)”とは広い緑地帯とか芝生といった意味。この店を訪れるお客さまには、芝生の上でピクニックをするようにお酒や会話を楽しんでいただきたい」。そう語るのは代表の小林操さん。併設するゲストハウスも同じ思いを込めて「SHIBAFU」と名付けました。

新宿の雑踏より海の近く

新宿の百貨店に勤めていた小林さんは葉山の出身。毎日都会の雑踏に通う中で、次第に自然が恋しくなったと言います。そこで「海に近くて都心に通勤できる場所」を探すことに。「長谷は祖母が暮らしていた場所で、通勤にも不便がないと思い決めました。仕事に不満はなかったので、住環境を変えよう、という気持ちでした」と語る小林さんですが、引っ越し後に何気なく交わした会話に心を動かされます。

「店をやるのは家賃と人件費がかかるから難しい、そんな会話でした。それなら“自宅で自分が回せる位の店だったらハードルは下がるんじゃ?”と思ったんです」。ついには「自宅を使って何か商売をしよう」と決意。「“何をやるか”は全然決めていなかったんですけどね(笑)。計画を進めるにつれて、実際長谷に住む自分が“こういう店があったらいいな”と思う店をやろう!と。長谷には夜やっている店や、“気軽に一杯”ができる店も少ないんです」。

2013年「HASE DINETTE GREENSWARD」オープン

そして、2013年6月に「HASE DINETTE GREENSWARD」をオープンします。「カフェバーを名乗っていますが、“DINETTE(ダイネット/小食堂の意)”をイメージしています。会社帰りに一杯とか、コンビニに立ち寄るような気軽な感覚で来ていただけたら。店をやるにあたって“ビアテイスター”の資格を取得したため、基本的にはビールが中心。料理もビールに合うものを前職で知り合った料理研究家さんにアドバイスをいただいて作っています」。

その名の通りこぢんまりとしてアットホームな店内は、お客さんと店主の距離がほどよく、地元の常連さんのみならず、観光で鎌倉を訪れたお客さんとも自然に会話が弾みます。

  • ビールは世界各国から40種類以上を常備

2017年「Guest house SHIBAFU」オープン

SHIBAFUもそんなお客さんとの会話から生まれました。「観光で来ていたお客さまから“鎌倉は好きだけど、泊まるところが高いし、少ない”というお話を聞いたんです。私の中で鎌倉は日帰り観光地の印象だったのですが、意外と違うのかと思って。試しに住居として使っていた2階の1室を改装してゲストハウスを始めてみたんです」。

2017年3月「Guest house SHIBAFU」を開業したところ予想以上の反響があり、すぐさまもう1室も改装、現在の2部屋に。今では年間稼働率約8割という、人気ゲストハウスとなりました。

「“民泊”ではないことを明確にしたかったので、旅館業法に則った申請を行い、法律上は“簡易宿泊所”です。1階のGREENSWARDと同様、アットホームな雰囲気は保ちたかったので“ゲストハウス”としました」。

最初はこわかった。けど、やって良かった

「SHIBAFUを始めた当初は正直こわかったです。英語も話せないですし。でもお客さまは皆さん、本当にいい方ばかりで。門限も守ってくださいますし、今のところトラブルも全くないんです」、そう語る小林さん。

「今でも英語は話せないんですけど(笑)、片言でもなんとなくは通じるようになりました。2階にもう1部屋あるんで、将来的にはそこもゲストハウスとして活用したいですね。あとはビーチクルーザーなどのレンタサイクルにも挑戦したいです。“鎌倉に住んでる感”を演出できたら、お客さまにより喜んでいただけるんじゃないかと思っています」。

  • 宿泊予約サイトでも高評価を得ているSHIBAFU

あくまでメインはGREENSWARD

好調なゲストハウス運営をしている小林さんですが、「あくまでメインはGREENSWARD」と言います。「始まりはGREENSWARDですし、ここが好きだからと通ってくださるお客さまもいらっしゃるので、変わらずに守り続けていきたいですね。今年で5周年を迎え、常連さんも増えてきました。SHIBAFUにご宿泊のお客さまも半数以上は下に降りてきてくださり、お客さま同士の交流を楽しんでいらっしゃいます。お客さまが増えると私は忙しくなって会話に加われないのが残念ですが、お話に耳を傾けているだけでも十分楽しんでいます」。

そんなGREENSWARDの看板メニューはバターチキンカレー。スパイスの調合からお店で行う本格派です。その他にもビーフジャーキーやコンビーフも自家製の味を提供しています。「お出しする料理はサラダのドレッシングも含め、基本的に自家製です。素材も地元の八百屋さんなどから仕入れ、なるべく地のものを揃えるようにしています」。

「拡大」ではなく、「末永く」

今後について小林さんは「規模拡大、とか大層なことは考えていません。自分の目の届く範囲で、お客さまと一緒に自分も楽しめる、そんな空間をこれからも末永く続けていけたら」と話します。

「そもそものコンセプトが“一人でも入りやすい店”なんです。最近実態もコンセプトに近くなってきて、女性お一人でいらっしゃる方も多くなってきたんですよ。そういうちょっとした成長も嬉しいですね」。

長谷の路地裏にたたずむ「HASE DINETTE GREENSWARD/Guest house SHIBAFU」は人と人とがほどよい距離感で触れ合える、あたたかな空間でした。

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