「OCEANTREE : The Journey of Essence」上映会トークショー(後編)

上映会終了後、登壇された石川拳大さん(監督・出演)、八神鷹也さん(映像クリエイター)、大野修聖さん(プロサーファー)にお話を伺えました。「OCEAN TREE : The Journey of Essence」制作の裏側、サーフィンを通じて考える未来のことなど、トークショーでは聞けなかったお話をゆっくり、じっくりと感じてみてください。

上映会トークショーの様子はこちらから。

サーフィンから海を学んだ様に、映像で海への思いを共有したい

地球は山も川も街も海も全て繋がっている、というコンセプトから作られたこの作品。サーファーとして、人間として、地球人として、自然や色々な方々との出会い共に過ごした時間や、ゴミという身近でありつつも気付かない現実、便利さが当たり前に感じている毎日、それに気付かない有り難さや感謝の気持ちなど、制作者自身の様々な感情が含まれた映画になっています。

—もともとサーフィン仲間だったというお二人ですが、この映画を作ろうとした切っ掛けは?

石川拳大さん(以下、石川さん):
僕が発起人となりクラウドファンディングを立ち上げ、それを切っ掛けとしてサーファーだけではなく、色々なジャンルの方々を良い意味で巻き込んで、何か出来ないか?と。その中でサーフィンの本質や、自分の感じた事を映像として発信したいと思いました。海に関するゴミという題材も切っ掛けの一つでした。

八神鷹也さん(以下、八神さん):
僕が表現できる方法は映像であり、一番大切にしたのは石川くんの想いと地球の問題をいかに映像として伝えられるか、でした。サーフィンから海を学んだ様に、映像で海への思いを共有したいというのが切っ掛けでした。

—映画の中ではアライアボード作りに挑戦していましたが、いかがでしたか?

石川さん:
ボードを削る事自体は5時間程でしたが、その間は無我夢中で、大変さはなくむしろ楽しかったですね。けれども、海から離れた山へ行ってから木材選びをして、運んで、サーフボードに削れる状態にするという準備に時間が掛かりました。ボードを作るというのはほんの一部で、前後の方がとても労力が必要で大変でした。

  • ▲木製のボード「アライアボード」

僕たちは地球の中の歯車の一部

—映画の主題の一つである海に関するゴミ問題について、制作してみて感じたことは?

石川さん:
海洋学者の方にお会いして、日本海溝の底7000mにビニール袋や缶が現在確認されている、というお話を伺いました。地上で暮らす僕たちのゴミがそんな海深くに存在しているという事実は、地球はやはり水の循環で成り立っているんだなと実感しました。

—海のゴミとして今、細かなプラスチック片(マイクロプラスチック)が注目されています。

八神さん:
マイクロプラスチックはそもそも人間が捨てたゴミのかけらで、それを魚が食べ、その魚を人間が食べるという事は、ある意味自業自得とも言えますし、全ては循環、サイクルなのだと思います。僕たちは地球の中の歯車の一部。一人ひとりが意識していけば必ず変わると思っています。

—ここ、湘南の海はどうですか?

八神さん:
湘南のゴミは多いですね、山はそれ程多くは有りませんが。海のゴミというのはそもそも海で捨てられたものだけとは限りません。多いのは街のゴミで、それが川に流れて海へと辿り着きます。見えていないゴミも、拾って貰えないゴミも多いと思います。

—サーフィンをしていなかったら気付けたと思いますか?

石川さん:
サーフィンをしていなければ全く気付かなかったと思います。今ある海のゴミは地球からのメッセージ。この映画を見て、一人ひとりがワンアクションを起こす切っ掛けになったり、忘れていた思いを意識して貰えたりすると嬉しいです。

自然と関わりあう事も含めてサーフィン文化

—では、ここからは大野さんにもご参加いただいて、この映画のもう一つの柱であるサーフィンについて。次回オリンピックから初めてサーフィンが競技として加わります。

大野修聖さん(以下、大野さん):
サーフィンを知らない人たちにも知ってもらえるとても素晴らしい機会だと思っています。それと共に、自然と関わりあう事に興味をもってもらえたら。そういう意味で、この映画で石川くんが示している事がサーフィンの根本でもあると思います。サーフィンは競技だけではなく、文化でもあります。サーファーと聞くと余り良くないイメージを持つ方もいるかもしれませんが、本当のサーファーは実はとてもピュアで、そういう部分まで広がっていくと嬉しいですね。

—サーファーとして、海との関わり方はどう思われていますか?

大野さん:
ゴミ問題については、自分が出来る範囲で海の行き帰りにゴミがあったら一つでも拾うとか、一つひとつ出来る事から始められれば。今いるサーファー人口が同じ事をしていけば、せめて今よりは海のゴミは減ると思います。

—プロサーファーからみた湘南の海はいかがですか。

大野さん:
サーフィン文化も深く、海沿いの関係性がとても良いと思います。自転車や徒歩で海へ行ける一方、バックグラウンドには街があり、コミュニティーの繋がりも深く感じます。世界的に見れば他にもあるのかもしれませんが、日本の中で言えば、サーフィンが発展して、それに関わる商業やサーフショップさんが成り立っているのは、そういう事なのかなと思います。

  • ▲ゲストとして登壇したプロサーファーの大野さん

「パッションファースト」、それが一番

—お三方ともとても未来を意識して行動されている、という印象を受けますが、次世代に伝えたいものは何ですか。

大野さん:
今年初めて「FUN the Mental」というイベントを開催させていただきました。自分がとても楽しかったのはもちろん、来場してくれた子どもたちの笑顔が絶えなかったことが印象に残っています。イベントにはプロサーファーの他に、サーフィンとは無関係の職業のプロフェッショナルたちが参加してくれて、そんな大人たちの姿を見て「こんな大人になりたいな」とか思ってくれたら嬉しいなと。そういう所から関わっていけたらいいなと思っています。

石川さん:
感謝の気持ちを忘れずに生きる事を伝えていきたいです。僕たちも含めて、パーソナルな変化、自然を変える以前として先ずは日本の教育、親からの教育を変えていかないといけないと思います。「パッションファースト」(=私利私欲を考えず生きていこうという考え方)で、シンプルに、みんなが良くなる事が自分もハッピーになれる、それが一番かなと思っています。人間は決して一人では生きていけないという事を、僕も常に感じますし、伝えていきたいです。

―上映会イベントを終えた今のお気持ちは?

石川さん:
まず、色々なジャンルの方々が来てくださったことに感動しています。何かしらの思いを持った来場者の方に私たちのエネルギーが伝わり、その輪に入ってくれただけでも本当に嬉しいです。想像以上に終わった後も反響が大きく、皆さんが「良かった、感動した」と言ってくださり、この映像作りに何十時間も掛けてやって良かったと本当に心から今思っています。

八神さん:
多くの人に感動してもらえたことに、感動しています。そして、この映像作りに自信が持てたことを実感しています。この映像をキッカケに、普段忘れがちなことを意識してもらえたらとも思っています。

大野さん:
石川くん達が描いている「自然と関わりあうこと」はサーフィンの根本であり、“サーフィン文化”でもあります。今後、オリンピックでサーフィンに注目が集まる中で、この映画を通してサーフィンだけじゃなく、カルチャーも含めて色んな人に知ってもらえると嬉しいですね。

…インタビューを終えて感じたことは、当たり前の様に今の環境で過ごしている中で、ほんの少し周りを見渡す余裕を一人ひとりが持つと、当たり前の事に感謝出来き、それはゴミ問題にも繋がっていく事なのだなと改めてこの作品とお話しを伺って気付かされました。とても深い問題ではあるとは思いますが、自分が今ここに生きている事の幸せ、周りの人たちが居るからこその今の自分、そんな事を一人ひとりが気付いて意識していけたら、大きな原動力になるのではないかと感じました。

 

【プロフィール】
石川拳大さん(監督、出演)
1994年6月21日生まれ。神奈川大学在学中のフリーサーファー。横浜に生まれ、4歳からサーフィンを始める。小学校2年生の時に湘南へ移り住み、数々のサーフィンの大会に出場。全日本学生大会2連覇、全日本大会優勝。オリンピック強化指定選手。環境団体サーフライダーファウンデーションジャパン:アンバサダー。日本オリンピック協会(JOC)を通じて、これからは企業に勤めながら世界ツアーを巡る予定。

八神鷹也さん(映像クリエイター)
1994年7月11日生まれ。平塚市出身。12歳でサーフィンを始め、その後カメラを通して映像クリエイターの道を歩み出す。16歳の時に全日制の高校から通信制の高校へ転校し、TV番組やCM、MVなど数多くの作品に携わる。現在も国内外に幅広く活躍中。

大野修聖さん(プロサーファー/トークショーゲスト)
1981年2月16日生まれ。静岡県伊豆、多々戸出身。幼少期からサーフィンの才能を発揮し、今や世界が認める日本のトッププロサーファー。オリンピック指定強化選手。JPSAグランドチャンピオンを国内で3度獲得。ASPジャパンツアー2戦優勝、年間チャンピオンの座に輝く。2015年ハワイパイプラインの波での大会ではセミファイナルに進出、7位入賞。日本サーフィン界で今、最も知られる存在。

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