【湘南談義録 -SHONAN casual minutes-】

「ゼロからスタート。でも、根本的なスタイルは一緒」対談:「TRUST ARCHER」x「【和】nico」(後編)

小田急・本鵠沼駅からはす池の方へと延びる商店街の一角に、こぢんまりとした昔ながらの建物があるのをご存知でしょうか? 昼間は薬膳料理が味わえる「【和】nico(ニコ)」が、そして夜には無国籍料理とお酒が楽しめる「TRUST ARCHER(トラスト・アーチャー)」が、2017年の初めからそれぞれの時間帯でオープンしています。

夜にはしんと静まり返っていた商店街に、「TRUST ARCHER」がオープンしてからは陽気な笑い声と赤提灯の光が届くようになりました。しかしながら、もとは「【和】nico」だけが暖簾を掲げていたこの小さな佇まいに「TRUST ARCHER」がやってきた経緯とはどのようなものだったのでしょうか。

締めくくりとなる後編では、お店づくりや将来のビジョンについて語られます。あの建物のキッチンに、しいねけんじさん(「TRUST ARCHER」)とごとうゆみこさん(「和ニコ食堂」)の2人が立てる日も残りわずか。これまで積み重ねてきた日々の中に、彼らは何を見たのでしょうか?

――それでは、オープン以後のお話を伺ってもよろしいでしょうか。

ごとうさん(以下、ゆみこ):
そうですね。いっぱい、喧嘩もしました。(人の心を)射抜くにしても、全然やり方が違ったりして。当たり前のことなんですけどね。それ、朝まで話したよね〜。ほんっと、半年ぐらい朝まで話してた気がする。この(メニューの)コピー1枚にしたってあれですよ、(ケンジくんは)料理も含めてすべてにこだわる人ですから。そんなこともあったよ、覚えてないでしょ?(笑)

しいねさん(以下、ケンジ):
……そうだね(笑)

ゆみこ:
(笑)でもね、日々感動することもいっぱいあるんですよ。お店の空間づくりっていう点では、私ケンジくんから勉強させてもらって。“射抜く”ってことを考えるときに、ケンジくんは「このお店に1歩でも入ってきた人たちは、俺らと糸でつながってるんだ」って。だから、「最後まで糸を絶対に大事にしてほしい」って教えてくれたんです。

本当にその通りだと思ったし、今も、これから先も大事にしていこうと思ってます。お客さまとは全部がつながってるんだよ、って。

ケンジ:
ほんとシンプルに、(この考え方は)やりながら感じてったことなんですよ。“「TRUST ARCHER」=みんなの遊び場”っていうような、みんなが楽しそうにしてるイメージはゆみさんと話しながら想像してたんです。みんなが楽しめるような場所を、自分たちも楽しんで演出するというか。

やっぱ、みんな楽しめなきゃダメだと思うんですよ。このお店の狭さだからこそ生まれる力、エネルギー、空気みたいなものがある。だから、自分たちの店はしっかりと自分たちで守る。

ケンジ:
グッとくるメシ、グッとくる酒、グッとくる空間。でも、空間って建物だけじゃ作れない。やっぱ(空間を作るのは)人間だから、すげー大事。そういうことはやりながら作ってきたし、それが現在な気がして。

ゆみこ:
美味しいごはんをつくるのって、言葉は悪いかもしれないけど、ごはん屋さんとして当たり前のことじゃない? でも、全部なんだって。トータルなんだな、って改めて思います。

ごはんを出すのは当たり前で、最後に「ここに食べに来てよかった、心も満たされて楽しかった」っていう、要は「楽しい!」って思ってもらえるようなごはんをこれからも作らなきゃな、って思います。

――そういう意味では、お互いがお互いから学び合っているみたいですね。

ケンジ:
そう。俺、突っ走りがちなんで。ゆみさんは「まぁまぁ、ちょっと待て」っていう役割をよくしてくれるんです。

ゆみこ:
で、たまには「行け、行っちまえー!」って乗っかったりします(笑)

ケンジ:
(笑)だから、その場の雰囲気も込みで「きょうはこの酒がうまいなぁ、沁みるなぁ〜」みたいな。僕が作っていきたい世界っていうのは正にそういうものなんですよ。

そこに、「nico」が持ってる女性目線のやわらかさというか、僕にはないものを掛け合わせていったら、そういう雰囲気を作れる職人のゆみさんと一緒にやれたら、もっと面白いものが作れるんじゃないかな、って思って始めました。で、結果的にその通りだったし……じゃ、こっから未来の話しましょうか(笑)

ケンジ:
今のこのお店は「nico」の10年の歴史の中でこうなってきたけど、(「TRUST ARCHER」オープンによって)またゼロからスタート。でも、自分の中の根本的なスタイルは一緒。新しい仲間も増えていったりする中で、ここからまた新しいものが生まれていけばいいんです。

もう新しい物件のこともあるんだけど、今は12月31日(現在のお店での最終営業日)に向けてエネルギーを持っていきたいし、お客さんにも今のこの感じを味わってもらえたら。この建物はなくなっちゃうし、同じような場所はあっても同じ景色にはならないから。ここでやり切ることに重きを置いていきたい、って感じです。

さらにその先に、僕個人の夢として、地元で「BROTHER(ブラザー)」ってお店をやりたい。ここと同じぐらいのキャパかなぁ。そんなあったかいお店ができたら……っていうのがもうちょっと先の未来。ゆみさんもやりたいこといろいろあるしね。

ケンジ:
反応し合った人間同士が集まって、最高におもしれーものをまた作っていければいいかな、って。いっぱい手出して広く浅く「あれもやりたい、これもやりたい」じゃなくて、気の合う仲間と、本気でやれることをちょっとずつ増やしていきたいかな。そこに向かってくイメージです、「nico」と「TRUST ARCHER」は。

ゆみこ:
……大事にしてもらってます、「nico」も(笑)でも、やれることはそれぞれにあるので、2倍が4倍に、それにそこからまた増えていって……っていうのはこれまでもすごく感じてきたし、彼が入ることで何倍にでもなると思ったんです。

だから来年からはさらに、もっと大きくなると思います。彼を筆頭に……じゃないですけど、「楽しい」を伝染させてもらえたらいいなって。その中で、私はちょっと和ませようかな(笑)

ゆみこ:
でも、「『nico』はちゃんと残していきましょうよ」ってケンジくんが言ってくれたのは本当にありがたいことで。2人でやっていくことって、ある意味すごく難しいことだと思います。トップが2人いるし、お店だけじゃなくて何にしても難しいと思う。

でもケンジくんは、もちろん引っ張ってもくれるけど、私がやれることに対しての敬意も持っていてくださる方なので、一緒にできるんだと思います。ってことは、こういう感覚がお客さんに対しても広がって、みんなが楽しいと思える場所を私たちは作っていくんだと思うし、作れると思っています。

私は去年の今頃まで、このお店がなくなることは正直悲しかった。だって、ここまで作ってきたんだもん。だけど、ケンジくんとやったこの11ヶ月間で、「次があるんだ」って。もっともっと楽しめるんだ、っていう思いで、胸がいっぱいです。だから頑張ります。楽しみです。ね、ケンちゃん? お世話になってます(笑)

ケンジ:
こちらこそ、お世話になってます(笑)僕も夏におふくろをこっち(湘南)に連れてきて、しばらくはこっちに拠点を置いて「nico」と「TRUST ARCHER」を次のステージに持っていきたい。自分らが地に足をつけるための土台になるのがそこだな、って思ってます。

あと、やっぱここ(湘南)の人もすげー好きなんすよ。いろんな人がいて面白いし、そういう人たちとの出会いもあるし。

ゆみこ:
みなさんが楽しんでくれる場所を作るために、私たちは全力でいきます。「いつでもシンプルにいこうね」ってケンジくんと話しながら、ね。

ケンジ:
グッとくるメシ、沁み渡る酒、楽しい空間。それを作っていきたいだけっす。「笑う門には福来る」ぐらいの、そういうイメージで。

湘南談義録 -SHONAN casual minutes-

気心知れた相手とのおしゃべり。時に笑いながら、またある時には込み上げるものを感じながら……それは湘南の暮らしをよく表しているひとときかもしれません。この街の生活を彩るものとは、いったいどのようなものなのでしょうか。本コーナーでは、“湘南の良さ”としてしばしば挙げられる「つながり」をテーマに繰り広げられるトークをお届け。海薫るスローライフのエッセンスをご紹介します。

和(ニコ)ニコ食堂 / TRUST ARCHER
和ニコ食堂 … 11:30〜15:00
TRUST ARCHER … 19:00〜25:00
CLOSE TUESDAYS
Facebook: (nico)@TRUSTARCHER

ライター情報

akira suematsu

akira suematsu

湘南生まれ湘南育ちの純・湘南ボーイ。そのわりにサーフィンは未経験だが、鵠沼の海が世界で2番目に落ち着く場所である。まだ見ぬ湘南の魅力、そして多様なライフスタイルのあり方を求めて、ペンとカメラを両手に行動範囲を拡大中。

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