【湘南談義録 -SHONAN casual minutes-】

「当たり前のことを、当たり前じゃない情熱で」対談:岩本知也x大西芳実(後編)

湘南屈指の人気を誇り、数々のタイトルを受賞してきた「麺やBar 渦」。このお店のラーメンに魅せられ、そしてオーナーである大西芳実さんの人柄に惹かれて、遠路はるばる修行にやってきた人がいます。

生まれも育ちも愛媛・松山という、岩本知也さん。地元企業の営業マンとして全国を駆け巡る日々に別れを告げ、一世一代の大勝負に出ることを決意しました。そのとき彼が頼ったのが、湘南の地で丹精込めた1杯を作り続ける大西さんだったのです。

前編中編と2回にわたってお送りしてきたこの対談も、いよいよ最終回を迎えます。今回はそれぞれが暮らす街、そして屋号にまつわるエピソードも明かされます。

日常を過ごすならこっち(湘南)の空気がいい、とかね(大西)

――湘南という街についての印象はいかがですか?

岩本:
僕は縁こそありましたけど、ゆかりはまったく無くって。これまでにもちょこちょこ来てはいましたけど、全然よその者がちょっとの間だけお邪魔した、っていう感じで。面白いなぁって思うのは、みんなやっぱり地元が好きなんですよね。

大西:
(自分たちが)地元を好きだからね、人の土地を馬鹿にしないんだよ。その代わりに「(○○って)いい所だよね!」って。

岩本:
あぁそれもそうかもしれない。渦のお客さんにも「俺の先祖の先祖の先々祖が四国で〜」みたいに声を掛けていただいたし。先々祖って初めて聞きましたけど(笑)

でも、地元に対する愛着みたいなものはあるのかなって。

大西:
郷土愛なのかな〜。うん。まぁ先輩方とか、じいちゃんばあちゃん達がこの土地を大好きだから、僕も大好きになったかな。

人もあんまり出ていかないしね。むしろ「都内からこっちに引っ越してきて、東京の会社に通ってます」っていう人もいっぱいいるし。

――僕の周りでも、就職は都内で……という人が多いですね。

岩本:
ね? ほら! こういう自慢話になるんですよ。

大西:
いやいや、普通の話だよね? (地元民にとっては)当たり前のことを話してるだけだよ。

  • ▲ 「麺やBar 渦」「麺や 渦雷」の店主・大西芳実さん

岩本:
いやー、でも僕らからすればそういうところに「この人たちは地元に誇りを持ってるんだな」って思うし、いい話をするなぁって思う。湘南の人は特にそういうところがある気がするなぁ。

大西:
東京の隣の県だっていうのもあるかもしれないね。「東京は遊びに行くところ、仕事しにいくところ」みたいな。日常を過ごすならこっちの空気(雰囲気)の方がいい、とかね。海の近くで、ゆったりとした文化が出来てるからかもしれない。

愛媛の海は美味しいものがいっぱい獲れるイメージだなぁ。この辺の海もおいしいものはあるにはあるけど、そんなに聞かないもん。魚の種類もそんなに豊富じゃないし。かたや鯛だの太刀魚だので、 かたやシラスだよ? 我々は雑魚ですよ(笑)

「錦 iwamoto」の看板を背負った以上は、彼の看板も背負っているので(岩本)

大西:
僕、地元は湘南だけど生まれは高知なんです。高知が好きで、ちっちゃい頃は毎年高知に帰ってました。じいちゃんばあちゃんも住んでるしね。

実家が高知市の方だったんで高知城とかもよく行ってたんですけど、今回初めて松山の城下町を見てみたら、すーっごく似てたんですよね、高知と。お城があって、その下には賑やかな城下町があって、そこにチンチン電車が走ってて……みたいな。この年になって四国の良さを改めて思ったのと、四国で仕事できるっていうのがすごく嬉しかったですね。

「故郷に錦を飾る」から取って、(岩本さんの)お店の名前は「錦」なんですよ。四国が故郷のひとつだとするなら、僕としてもそれにあやかってる感じですね。一緒に「錦」って合わせてくれたのかな、って思ってます。

岩本:
あのね、実はもうひとつ意味があるんですよ。「オオニシ」の「ニシ」を入れたんです。「錦(ニシキ)」の中に。

自分の中で、今回はビジネスパートナーっていう形ですけど、彼がいなかったら成し遂げられないというか、一歩も前に動けないっていう中で、彼がいなかったら僕の人生も変わってないんですよ。

だから、今回お店を立ち上げるっていうのは僕の人生を懸けた大博打なんですけど、その中で彼の名前にあやかろうというか。ちゃんと正念入れていこうと。(「錦 iwamoto」の)看板を背負った以上、彼の看板も同時に背負っているので。

  • ▲ 愛媛・松山で「錦 iwamoto」を開く岩本知也さん

岩本:
今日もテレビ局とかが来てましたけど、“地元・松山で「錦 iwamoto」っていうラーメン屋がオープンします、それは湘南の名店「渦」の大西芳実さんがプロデュースしてます”、っていうのが大々的に出ると思います。

そうしたら、みんな(渦のことを)知らない人でもきっと検索するだろうし、「どういう人だろう?」とか、「どんなお店なんだろう?」「こんなにテレビに出るようなお店ってどんなところなんだろう?」ってきっと検索すると思うんですよ。

じゃあこれで例えば僕が中途半端な仕事をしちゃって、僕だけが失敗するのはいいんですけど……

大西:
……いや、だめだろ(笑)ダメダメダメ(笑)

岩本:
まぁ、失敗するはずないんですけど(笑)

けど、(もしそんなことがあったら)「大西芳実」という名前に、渦のお店に、そしてスタッフの人達にも恥をかかせてしまう。絶対そういうわけにはいかないので、僕は正念を入れてやろうと。

今回もちろんレシピを作ってくれたということがひとつだし、素材の地鶏を育ててくださっている農家さんにもそうだし、鶏自身も命を燃やして、それを僕らがいただくわけですから。責任があるわけですよ。

努力は必ずしなきゃいけないんだけど、人前でするもんじゃない(大西)

岩本:
「やりたいからやる」っていうそれだけのことではなくて、僕は正念入れてやりたいっていうのがあって。頭の中で「何か一文字でもいれられるかな?」って思ったんですね。

最初は(岩本知也という)名前4文字のどれかひとつを入れようっていう考えだったんですけど、最初は。ちょっと隠して「実はこういう意味なんだよ」っていうのも面白いなぁって。

大西:
「YOSHIMI IWAMOTO」とかにすりゃよかったんじゃない?

岩本:
いやそれね、「岩本芳実」さんですから(笑)違う人です(笑)

――(笑)さて、最後の質問です。

ここ湘南で1週間過ごすうちに、きっと様々な出来事があったと思います。そこで、「これからもずっと大切にしていきたい」ということはありますか?

岩本:
「当たり前のことを、当たり前じゃない情熱でやる」ことですかね。彼の仕事ぶりを見ていて、というか今までもそういうところを見てたから好きなんですけど、それが社員一人ひとり、みなさんにも伝わって、ちゃんとやろうとしているのを見て、それが素晴らしいなって。

本当に当たり前のことなんですよ、きっと。でもそれを当たり前でない熱意というか、情熱でやってるからすごいんだな、って。でも当たり前のことだから、俺も頑張ったらできそうだなって。

大西:
意識するだけで違うから。あと努力なんて用を足すのと同じようなもんだから。必ずしなきゃいけないんだけど、人前でするもんじゃないし。

毎日ちゃんとしろよ! でも人前でするんじゃないよ!

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麺や 渦雷
神奈川県藤沢市辻堂新町1-9-7

[営業時間]
11:30〜15:00/18:00〜21:00

[定休日]
月曜日
※月曜日が祝日の場合は営業・翌火曜休み

[お問い合わせ]
Tel: 0466−33−5385

[ウェブサイト]
http://menya-bar-uzu.com/uzurai/

湘南談義録 -SHONAN casual minutes-

気心知れた相手とのおしゃべり。時に笑いながら、またある時には込み上げるものを感じながら……それは湘南の暮らしをよく表しているひとときかもしれません。

この街の生活を彩るものとは、いったいどのようなものなのでしょうか。本コーナーでは、“湘南の良さ”としてしばしば挙げられる「つながり」をテーマに繰り広げられるトークをお届け。海薫るスローライフのエッセンスをご紹介します。

ライター情報

akira suematsu

akira suematsu

湘南生まれ湘南育ちの純・湘南ボーイ。 学業、趣味などで国内外あらゆる処を訪ねてきたが、最も安らぎを覚えるのは鵠沼の海。ここまで言っといてサーフィン経験はない。ただ、交友関係にサーファーが増えつつあるせいか、最近はちょっとずつ影響されている。 まだ見ぬ湘南の魅力、そして多様なライフスタイルのあり方を求めて、ペンとカメラを両手に行動範囲を拡大中。

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